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壊について(髑→骸)



※血表現あり
※薄暗い話です






体の痛みは心の痛みを忘れさせてくれるでしょうか。




温かい血が腕を伝い落ちて
見つめる先の水溜まりがかさを増す。

私は痛みがほしいのに
痛覚は麻痺し始めた。

なんて使えない体。

「死にたいんですか」

無感動な問い掛けが降ってくる。

「むくろさま」

私はゆるゆると首を左右にふる。

「生きたいと思いたくないんです」

頭の中に流れこんでくる声が、直に鼓膜を震わせるようになった時、私は
もう要らないのだから。

「駄目ですよ」

その声は絶対的な効力を持つ。
私は腕を止めた。

「お前の体は僕の大事な器なんですから」

優しく有無を言わせない制止。

「……はい」

そうして私は血まみれの刃物を床に転がした。

自傷すら許されない不自由。
不思議。
その不自由さに安堵した。

ずきずきと拍動に合わせて疼く傷。
こんなことをしなくても。たとえ、私が生きたいと思おうと。
「私」に関係なく支配者は、要らなくなった器を綺麗に壊して捨てるだろう。

何も考える必要がないというのは、ひどく楽だった。


ぷつりと骸さまからの意識が途切れるのを感じた。

することがなくなってしまって、私はただぼうっと床を見つめた。
血溜まりが広がっていく。もともと赤黒い静脈血さえ酸化して褪せていくのがなんだかおかしくて、私は少し笑った。



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