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短編

※ピリカさんからの頂き物です。







「了、じゃあ…また」

遊びに来ていたマリク君が玄関先で手を振る。

ボクは同じく手を振り返す。


「また、明日ね」





「……ふぅ」


人を呼んだ後は片付けが面倒なのだ。

マリク君達は神経質なせいか

割と綺麗に飲み食いしていってくれるんだけど

それでも面倒に代わりはない。


「…ただいま」

「あ、お帰りバクラ」


買い物から帰ってきたらしいバクラが片付けを無言で手伝ってくれる。

なかなか素直には言えないんだけど、

ボクが頼まなくてもいろいろしてくれるのには本当に感謝しているんだ。


「……シュークリーム、おつとめ品になってたから買ってきたぜ」

「…ほんと?嬉しいな」


でも本当は、買ってきてくれたお前の心のほうが嬉しい。

そんな風に考えながら袋からシュークリームを取り出し…


「……あれ?」


一個だけ、だった。

…バクラ、食べないのかな…

ボクはなんだか心配になりながら

半分にちぎったシュークリームをバクラの前に差し出した。


「…食べ…る…よね?」

「……いやオレ様は………まぁ、じゃあ貰うかな」


少し逡巡した後、

バクラがちゃんと受け取ってくれたのでボクはホッとした。


「……甘いもの、あんまり得意じゃなかったっけ?」

「…嫌いじゃねえが…あんまり自分からは食べねぇな」


ボクはこんな風にぽつりぽつりと自分のことを話すバクラが好きだ。

一時期は同じ身体を使っていたとはいえ、ボク達はマリク君達とは違う。

同じ人間じゃ、ないんだもの。

言わなければ伝わらないことの方が多いんだと思う。

さっき、だって。


「……宿主?」

「…あ…ごめ…ん、またぼーっとしてたみたい…」

「…あんまり、無理すんなよ」


バクラは心底心配してくれたのか、ボクの頭をさわさわと軽く撫でた。

ボクはそれがなんだか気恥ずかしくて、思わずバクラの手首を掴んでしまった。


「……ん?」

「……え…いや…なんでも、ないよ」


ボクは掴んだ手を離し、視線を膝に落とした。

時々、バクラは凄く懐が広く見える時がある。

普段はやる気なさそうに、仕方なさげな空気を纏っているのに。

「……ずるいよ」

「…何がさ」

「…お前が」

「……盗賊だからな、これでも」

「………お前、あんまり金品とか盗まないでしょ」
 「…いいや、盗んできたぜ…たんまりな」

「…嘘つき。一番高い物盗んでおきながらそんなこと!」

「…おい、宿ぬ…」

「ボクの心、どこに盗んでいっちゃったの!?返してよ!」


ボクはバクラの肩を掴んで揺さぶる。

まあボク非力だからふにゃふにゃと軽く揺れる位にしかならないけど。

ボクはバクラが好き。

でもバクラはきっとボク以上にボクのことが好きなんだと思う。


「……シュークリーム、温くなるぜ」

「…シュークリームなんかいいからボクを見てよ」

「……拗ねんなよ、宿主」


癇癪を起こすボクを、バクラは珍しく優しい表情で宥めてくれる。

けして、他の人に向けられたことのないその顔。


「………いつも、ありがと」

「…礼を言うのはこっちの方だろうが」

「…ねぇバクラ」

「ん?」


ボクは普段から気になっていたことを聞いてみた。

この口が、心に素直なうちに。


「…バクラはボクといると、胸が熱くなったり…する?」


返って来た答えは、勿論。


「……恋だからな」


やっぱりボクはバクラに本気で惚れちゃったのかもしれない。


END




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あきゅろす。
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