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ひとりでできるもん。 (ネジ)
1000,1111記念?一人シリーズ。
こんにちは。
火の国の隠れ里、木の葉の美人忍者、山中イノです。
今日お伝えしたいのは、みなさんもよくご存じのネジ上忍の「あの」噂についてです。「あの」噂が本当なのかどうなのか、私には判断つきかねますが、そもそもの成り行きをお教えしたいと思います。
全ての始まりはアカデミー時代にまで遡ります。
私たちはネジさんの一つ下で学んでいました。ネジさんといえば、非常に優秀で大人びていて、私たちにとってはまさに憧れの先輩でした。同学年のサスケくんの方が人気がありましたが、中にはネジさんに想いを寄せる子も少なくなかったはずです。
ユメも、そんな一人でした。
最初は本当に些細なきっかけだったと思います。
確か、落としたものを拾ってもらった、とか、廊下で転んで助けてもらった、とか、階段で落ちそうになって助けてもらった、とか。
そうです、彼女は忍を目指しているというのに昔から抜けているというか、よく転ぶ子でした。私はよく彼女の面倒を見てきたものです。
『イノちゃん、すごく素敵な人だったの』
一目惚れ、というものだったのでしょう。
名前もクラスもわからない誰かにユメは恋をしました。初恋でした。
ですが、もう一度言います。
その相手、ネジさんは私たちからすれば有名過ぎる先輩です。知らないでいたのはドべだったナルトとド天然のユメくらいでした。食べることだけしか興味のないチョウジもまた知らなかったかもしれませんが。
『えっ!?そんなスゴイ人だったの!?
日向一族!?ってヒナタちゃんのいとこ!?いいなあヒナタちゃん。‥あ!!確かに目が似てるかも!!』
当たり前でしょ!似てるんじゃなくて、同じ目なの。白眼知らないとか言わないわよね!?
とすごんだのは、サクラだったと思います。先を越されたなと思った記憶がありますから。
『そっか、ネジさんっていうんだ‥。そっか‥』
残念ながら、別の世界に行ってしまった彼女にサクラの言葉が聞こえたかはわかりませんでした。
ヒナタ程じゃないにしろ、どちらかというとユメもまた消極的なタイプの女の子でした。
サクラのように図太くなることもなく、だからといってヒナタ程引っ込み思案でもなく。日常的には普通だったといえますが、ネジさんが絡むと、途端に彼女は臆病になりました。
その理由について、私たちは「すごい人過ぎるから」や「好きな人と話すなんて恥ずかしくて」といった一般的な女の子らしい理由だろうと考えていました。
まさか天然で子供っぽいユメが「ネジさんは私と違う、何か大きくて悲しいものを抱えているから」なんて思っていたとは全く気づかなかったのです。
ネジさんがあんなにも日向本家を憎んでいたなんて。大人たちですら、ヒナタに容赦ないネジさんに焦ったほどでしたから。あの中忍試験の前にネジさんの抱えていた何かに気が付いたのはユメだけだったんじゃないかと、あとになって驚いたものです。
ナルトとの試合で、ネジさんは吹っ切れたようでした。
そんなネジさんに、ユメはますます惹かれていったようでしたが、活躍する彼がさらに人気を集めはじめ、今度は気おくれするようになったのでした。
ファンクラブのようなものまでできていれば気おくれするのも仕方ないとは思いますが、勇気も足りなかったと思います。
せっかく私たちがヒナタを巻き込んでまでチャンスを作ってあげても、うまく話しかけられなかったり、よくても挨拶で終わってしまう。
正直ハラハラどころではなく、サクラなんかはイライラしていたみたいでした。
しかし、天然なユメも、木ノ葉の忍の一人です。
いくら抜けていても、実力は確かなものでした。
普段のぽやっとしたユメと任務中の真剣な姿勢。そのギャップにクラりとくる男は多く、実際彼女はアカデミー時代から密かに人気があったものです。
実力をつけたユメはそれなりに活躍し、時にはネジ上忍のもとで任務に出るようにもなっていましたが、やはりこれといった進展はないまま時が過ぎていきました。
『私、もうどうにかしようと思うの』
突然、そう宣言したユメに、やっと覚悟を決めたのか。勇気を出す気になったんだな、と私もサクラもここぞとばかりにアドバイスをしましたが、
『イノちゃんもサクラちゃんもありがとうね。でも、もういいんだ。
もう片思いはつらいよ。
これですっぱりあきらめるから』
これといった努力もせずに何があきらめるだ、と私たちは詰め寄りましたが、思いのほかユメの意思は固く、しまいには
『もういいの!
これは私の決めたことなの。だから、ひとりで、決着つけるよ。
大丈夫。私だって、やるときはやれるよ』
そう言って、思いつめた顔で帰っていきました。
言葉通り、次の日の任務の帰りに、ユメはネジさんに話がある、と切り出したのです。私たちはなんだかんだ言ってもユメが心配でしたので、気配を出来る限り消してこっそり覗いていました。もちろん心配だけじゃなく、好奇心もあったわけですが。
『わ、私‥!ずっと前から、ネジさんに憧れてて、‥あの、アカデミーの頃に、ネジさんに助けてもらってから、ずっと見てて‥!
ずっと、好きでした!』
こんなことでお時間取らせちゃってごめんなさい、だとか謝り始めてテンパったまま帰りかけたユメに、ネジさんが小さく笑ったのを、私たちは見たのです。
そして‥
『やっと言ってくれたな、ユメ』
頑張ったな、と。
まるで子供を褒めるように。
ネジさんはユメの頭を撫でました。笑顔で。
そうです。ネジさんはユメの気持ちにずっと気付いていただけでなく、2人は両想いだったというわけです。
それから、真っ赤で硬直したユメに何かを囁いていましたが、残念ながら私たちのところまでは聞こえてきませんでした。たぶん覗いていたのがバレていたのでしょう。わかったのは、ユメがさらに赤くなったことくらいでした。
そんなユメに微笑みかけてもう一度頭を撫でて。
『帰ろうか』
ネジさんはユメの手を引いて、帰っていきました。
その2人の後ろ姿が、恋人同士のそれではなく、なんだか親子とか兄弟のように見えたのは私だけじゃないはずです。
その証拠が、「あの」の噂ですから。
私は言いふらしてなんかいませんよ?
でどころはサクラじゃないですか?私はほんの数人‥とちょっとプラスアルファ‥くらいにしか話してませんから。
だって、「ネジさんって実はロリコン?」なんて。
いくらユメが可愛らしくって天然で小っちゃくて、子供っぽかったとしても、あんまり信じたい噂じゃありませんよねー。
話題にはなるし、何より面白いけどー。
私はユメの恋がが上手く実ったことだけに喜んでいますよ。ほんとほんと。
私は事実を話しただけです。
噂が本当かどうかを判断するのはくれぐれも自己責任でお願いします。
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