n.short
どっちもどっち (ナルト)
最強ツンデレ番外。
「なーに怒ってんだってばよー」
「‥‥‥‥‥‥」
「もしもーし?
ユメさーん?」
全く。ナルトのバカ!
もう知らないから!
「俺ってばなんかした?」
「違いますよ、ナルト」
里の復興作業中。
黙々と作業を進める傍ら。
ナルトは包帯ぐるぐる巻きのくせにふらふらと出歩いて私のところまでやってきた。そして、わぁわぁと今回の武勇伝を私に聞かせていたのだが。
私は、作業に集中してナルトに返事も相槌もほとんどしていなかった。
「サイ、おめぇには聞いてねぇってばよ」
「まぁまぁ。
ユメの代わりに僕が教えてあげますから」
「お前、何どさくさに紛れて呼び捨てにしてんだ」
「そりゃぁ僕とユメの仲ですからね」
どんな仲だ、と私は内心突っ込むけれど、まだ私には会話に入る気はない。
「はぁ!?」
「ナルト、残念ですが、君はもう恋人じゃないんですよ」
‥はい?
思わず作業の手を止めてフリーズしてしまった。
瓦礫越しに向かいにいたネジも同じらしく、見開かれた目が合った。違う違う、とネジに向かって小さく首を振って否定してみる。
「ユメは君がいない間に浮気をして、軽い浮気のはずが、いつの間にかナルトよりも‥」
なんだそれ。
うん、サイだわ。
サイは空気読めないもの。私は、もう何も驚かない。
「勝手なこと言うなってばよ!」
「最初は信じられないよね。
でも、諦めなきゃ、ナルト。三角関係で殺人事件に発展するのはまずいからね」
「またお前はどんな本読んでんだよ!
びっくりしたー、小説じゃあるまいし浮気なんて‥‥ない‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥なんだ」
私は呆れて作業を再開するが、向かいのネジはナルトと睨み合ってるみたいだ。
「‥‥まさか‥ユメ‥ネジと‥俺のいない間に!?」
「馬鹿か?
お前の援護に無駄に呼ばれた俺にそんなチャンスはないだろう」
無駄に。ネジがそこを特に強調したのは気のせいじゃないと思う。
「だよな!うん!サイもネジも、サスケすら里にいなかったんだもんな!浮気なんて‥浮気‥‥」
いや‥まさか‥と不安になりはじめたらしいナルトにサイがトドメを刺した。きっと笑顔で。
「そうかな?
ナルトだって浮気してたんだし、有り得ないことないでしょ?」
―――ドゴッ。
私の足元で鈍い音がした。
「どうしたんです、ユメ?」
振り返るとニッコリ笑ったサイ。瓦礫、落ちましたけど?と白々しい。私も笑顔を貼り付けてサイとナルトに向かい合う。
「ユメ‥?‥ど‥どどうしたんだってばよ‥?」
「アマルちゃん、可愛かったんでしょう?」
「君に比べたらブスでしたけど、ナルトには可愛かったらしいね」
「は?ちょっ‥待てサイ!何言って‥」
「だってナルト、さっき見送った時も抱き着かれて赤くなってたじゃない」
「へぇ?それは良かったわね」
ニッコリ。
ナルトが焦るあまり汗をかきはじめた。
「私お会いしたかったけど、復興作業中だったから彼女のお見送り行けなくて残念だったわ」
「大丈夫ですよ、彼女の村の復興が一段落したらすぐナルトに会いに来るって言ってましたから」
「‥サイ!お前ちょっとは空気読めってばよ!!」
それを聞いて私は、心にさざ波が立つのを感じた。
「‥‥‥ナルト?
浮気っていう自覚、あったわけ?」
「え!?違っ‥いや、好き‥みてーことは言われたけど、それだけじゃ浮気にはなんねーだろ!」
「ナルトの馬鹿っ!
いつもみたいに無自覚だったらもう諦めてたのに!
私がいるのに、そんなにモテたいの!?」
「無自覚ってなんだよ!」
「無自覚タラシだって言ってんの!無自覚じゃなかったらただのタラシじゃない!」
「俺をエロ仙人と一緒にすんな!
お前以外と付き合ったつもりもないし、責められるようなことした覚えもないってばよ!」
「よく言うわ!
彼女がいますとも言えないくせに」
「そんなん恥ずかしくて言えるかー!」
「っ、もういい!知らない!
モテるナルトと付き合うの、私もう疲れた」
「ユメ、一段落着いたなら向こうの方人手が足りなそうなので行きましょう」
珍しくサイが空気を読んだ申し出をしたので、二つ返事でその後を追った。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ちょっと待てッ!!
無自覚タラシ!?モテるだぁ!?自分のこと棚に上げてんじゃねーってばよ!!
ネジだサイだと‥今までどんだけ俺が心配して苦労してきたと思ってんだ!!
サイ!お前俺の前でユメ連れ出すたぁ良い度胸だな!覚悟しろよ!!?」
「‥‥‥‥‥あれ、ナルトは?」
「カカシ先生。
ナルトは‥少しは成長したみたいですね」
「何、どしちゃったのネジ?」
「いえ、ただ、
少しは見所のある男になったな、と」
「へぇ。敗北宣言?」
「まさか。
馬鹿なこと言わないで下さい。
まだまだ隙だらけですよ」
「‥若いねぇー」
***
映画、絆のその後。
無自覚モテカップル。
ナルトの少しの成長とヒロインの少し大人げない嫉妬。無事だった安心感の裏返しとも取れる。
きっと嫉妬が原因の喧嘩はこれで最後でしょう。英雄になっていくナルトにキリがないと悟るから。
ただし、しぶといネジにサイの参戦で、ナルトの心配は続く(笑)
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