short
一人旅 後 (レノ)
私は、黙々と旅を続ける。
レノはその後をついてくる。
私の旅も、そろそろ終わりだろうと思った。
北の。大空洞に迫っていた。
大空洞が近づくにつれ、レノの警戒はさらに強まり、眉間にしわまで刻むようになっていった。
大空洞。
「はは‥、なんで‥っ。
‥‥‥なんで、ここにも。なにも‥ないの?」
「ケイト‥、あいつらの忘れもんじゃなくて。
お前は、あいつらのカケラがほしいんだよな?」
風の音に混じって、レノの静かな声が聞こえる。
「‥‥‥」
カケラ?
私が探していたもの?
「見つかんなくて、今‥ちょっとホッとしてる。
お前はがっかりしたかもしんねーけど。
俺、口では『止めない』なんて言ったけどさ。‥もし、セフィロスの奴がお前の前に現れたらどうしようかとマジで警戒してた。
たとえお前が望んでても、俺は絶対会わせたくなかった」
「どうして」
「あいつはもう以前のあいつじゃない。
あいつがどこまで覚えてるかは知らないが。お前に危害を加える可能性だってあるんだぞ」
「‥そうね。
もし覚えててくれたら、私を殺しに出てきたかも」
「は?なに言ってんだ?逆だろ」
「セフィロスは、いつか私も殺すと言ったわ」
そうだ。
私は会いたかったんだ。
ザックスのところへ。エアリスのところへ。
私が一番、私でいられたころの思い出へ。
セフィロスが連れて行ってくれると思ったのだ。
「連れて行って欲しかったのかもしれない」
「あいつは、‥セフィロスは。お前を連れてかない」
レノははっきりと、強く言った。目が、逸らせなかった。
「セフィロスは記憶がどこまであるのかわかんねぇ。
クラウドもそう言ってた。
だけど、これだけは言える。
セフィロスがお前のことを覚えていたら、お前の前には絶対に現れない」
「‥どうして」
愕然とした。
やっぱり、私は、置いていかれたのだと、再確認してしまった。
「え‥。
なんでお前が凹むんだよ。
お前が無事なのは『セフィロスがお前を覚えてたから』ってことだろう?
だいたいなあ。セフィロスが大事にしてたお前を殺すわけがないだろ、と」
「だって、いつか殺すって‥」
「だったらその場で殺してるっつの。
お前のことだけは殺せないから、だからそう言ってただけだろ。気付け!鈍感」
「ど‥!?
そこまで言う?」
「この際だからどこまでも言ってやるぞ、と。
ザックスもセフィロスも、クラウドも。ちゃんとお前のこと忘れてなんかない」
「嘘。クラウドは私のこと、ただの知り合いとしか‥まさか。思い出したっていうの?」
「思い出してるぜ、とっくに。
ここでの戦いが全部終わったあとだけどな。
じゃなかったらあのまんま幼馴染とすぐくっついてたはずだぞ、と。
いつだったか、‥星痕の流行るちょっと前か?俺に『ケイトは、無事か?』って聞いてきやがった」
クラウドが、私を思い出した。
そんなこと、想像もしてなかった。
「なんて、答えたの?」
「『居場所も連絡先も所属も教えられない。でも、生きてる』。あと『俺が幸せにするからすっこんでろ』って、‥すいません。冗談です。ごめんなさい。そんな目で見ないでください」
‥なら最初から言わなければいいのに。
「あいつは全部思い出したからこそ、お前の前に立てないんだぞ、と。
お前がクラウドに会いに行けないように」
「‥じゃあ、もう会えないわね」
私からは会いには行かない。行けない。
クラウドもそうだというのなら。
私たちの道が交わることはもうないのだろう。
「そんなに恨んでんのか?」
「恨んではいない。でも、昔のように『好き』だけでは済まないの。
複雑すぎて」
「なら、なおさら会うべきじゃねーの?」
「まだ無理」
「十分だろ。
クラウドの奴、いまだにザックスやセフィロスのことでお前に罪悪感感じてるぜ。それをどーにかできんの、お前だけだろ?あのままじゃ次の恋にも進めねぇ。俺としてはさっさと次行って欲しい。
そんで、癪だけどお前の止まった時間を治せんのも、クラウドだけだ。
‥そんで。その肩の星痕も、な」
「気付いてたの?」
「当たり前だぞ」
俺もついてってやるから。
ほら、帰るぞ。とレノは手を差し出した。
その手を取ったのはほんの気まぐれだったのかも。
でも、胸いっぱいの感謝の気持ちは本物でした。
「楽しみだな」
「クラウドに会うのがそんなに?」
「だって、ソルジャー化してからのクラウドって誰のマネしてんだか、すげースカした奴なんだぞ、と。
それをお前の前で出せんのかってね。
お前の前だけで昔のヘタレたガキに戻ったら笑える」
「レノ。昔のクラウドはヘタレじゃないわ」
「へーへー。
いーですよー。ついでに宣戦布告っつーか、『もうお前の出る幕じゃねーぞ』っていってやるんだからな、と。釘さしとく」
「なに?釘?神羅ってか、ルーファウスまた何か企んでるの?」
「‥‥お前、昔からそんな鈍かったっけ?」
「え?」
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