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short
一人旅
トップ1000,1111記念?1シリーズ。
死神、その後。





旅を、しようと思った。

思い立って、それから。私は一般的な旅の仕方を知らないことに気が付いた。


鞄はどうしよう。
スーツケースでも、トートバッグでもない?リュックってあったかな。
服も、普段のスーツじゃなくて、パソコンも‥いらないよね。

結局、私は軍支給のリュックしか持ってなくて、
もう何年もの間、タークスの制服以外でミッドガルの外に出たことがないのに気が付いた。


例の戦いでぼろぼろになった神羅ビル。
クラウドが、‥私の知ってる‥けれど以前とは違うクラウドが、戦った場所。
セフィロスも。

まだ、私のよく知る彼であったころ。いつか、神羅の、神になろうとした男を、全てを壊すと言ったセフィロス。
彼が再び現れて社長を殺したと聞いたとき、彼が以前の彼であるのかとも思ったけれど。
彼もクラウドも、以前の彼らではなく、運命のままに戦い合い。セフィロスは星の敵として倒された。


ザックスもセフィロスも、クラウドも、もうここにはいない。
ここに残ったのは私だけ。





久しぶりに、
タークスだったころの私の部屋に帰った。

物であふれてるのは、8割がザックスとクラウドのものだ。
彼らが死んだと言われて、処分するはずだった荷物。捨てるぎりぎりになって、捨てられずに引き取った荷物だ。

私までがいなくなったら、この部屋は主を失った物たちの部屋になるんだろうか。

軍の携帯食料でまだ大丈夫なものを探し、サバイバルナイフに野営に必要なもの。
少しの着替えに、銃とマテリアと、片手で扱えるクナイにナイフ数本。
軍のものはやめて、ザックスのリュックを借りることにした。


どこに行こうか。

そんなことは考えてない。


いつ戻ってこようか。

もう戻ってこなくてもいいかもしれない。



クラウドが、セフィロスが辿った道を見てみようと思った。









私はいつから置いて行かれたままなのだろう。
旅の終わりには、私も彼らと同じ場所へ行けるだろうか。


ザックス、クラウド、セフィロス。
なんで私を置いて行ったの?

残された意味を考えたのよ。‥考えたけど、私にできることなんて何もなかった。
彼らの思い出だけにすがって生きる私は亡霊みたいだ。
死神。なんて言われてたっけ。
そうか。これが、私に与えられた罰なのかな。
独り、亡霊のように生きることが。


背負うと決めた罪だった。

でも、あまりに辛い。

私への苦痛ならばいくらでも受ける。地獄にだって行こう。

なのに。どうして私は一人この世に生きながらえている?

どうしてクラウドばかりが運命に動かされる?





「ザックス。
ここはミッドガルが見えるのね」


ザックスが最期に見た景色。
アンジールからザックスへ、ザックスからクラウドへと受け継がれたバスターソードは、今、丘の上からミッドガルを望んでいる。

帰りたかっただろうか。
エアリスのもとへ?
私たち仲間のもとへ?


「‥ビール、か。クラウドかな。
はい、花なんてザックスには似合わないけど、ミッドガルで咲いた花よ。
信じられる?あんな場所で、花が咲くなんて」

ある日、家のすぐ近くに草むらができていたことに気が付いた。
ただでさえ弱々しいものだったのに、暑い日には萎れていたから気持ちばかりの水をあげたりした。
秋になって濃いピンク色の花を咲かせたのには驚いた。
エアリスが、「星、もう大丈夫よ」と言っている気がした。

「随分前に。‥エッジでね、クラウドを見掛けたわ。
大人になってて、すごくかっこよかった。なんだか似合わないしかめっ面をしていたけど、レノが言うにはアバランチに入ってからずっとそうなんだって。
全然知らない人みたいだった」

ただ気配を消して、彼が行ってしまうのを待った。
再び会うつもりはないから。
彼は新しい道を進んでいる。取り残された私とは違う。

彼を苦しめる思い出の中の住人である私は、彼にとってとっくに過去の人間なのだ。


‥それに。

セフィロスを倒したクラウドに、私はどう向かい合ったらいいかわからない。


どうして。‥「どうして彼を倒したの」と。
クラウドを前にしたら口にしてしまいそうで。

倒すしかなかったのだ、と。
頭でわかっても、心が理解を拒否する。




ザックスのもとを離れると、
足は自然とニブルヘイムへと向かった。

全ての始まりで、終わりだった場所だ。





思い出と現実に挟まれたまま、夢を見る。



私は今どちらにいる?







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