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g.short
君に捧ぐ (??)
駄目だ。久々なのに夜中に書くと病み気味に!
そのうち直すか消すかします。


―――――――――――――――――――





「もー、本当に馬鹿ばっかり!」

「ははっ」

「ねぇ、ちょっと、ちゃんと聞いてる!?」

「聞いてる聞いてる」

「まじ本当あり得ないから、あのドS!万事屋も!」

「うんうん」

「ドSコンビ滅びろ!!」

「うんうん」

「………ついでに退も滅びろ!!」

「うんう…ん?……なんで!!」

「にこにこ笑ってうんうんって…!なんかムカついたから!」

「そんなーぁぁあ!」

「ちょうど良いや、ストレスの捌けぐ……研ぎに出した刀の試し斬りに!」

「ちょっ…!ぎゃあああ!
そ、れっ、言い直す意味あった!?
どっちも最悪なんだけどぉぉぉお」




いつものやり取りだった。

総悟に散々振り回されて、
戻ってきたら退がいて。

あーだこーだ、
いつもの愚痴を始めて。

くだらないことばっかり。
笑って、…笑って。


そうして、

また私は、いつものように、

総悟のもとへと振り回されに戻る。



いつも。


いつも。


それが、ずっと続くと思っていた。










「あれ、総悟?」

行く宛もなく、街をぶらぶらと歩く午後。
陽も傾いてきた時分に、通りで出会った腐れ縁の同僚。

「よ」

「サボり?」

「お前と一緒にしねェでくれやす?」

「違うの?」

「違う。………といーのになー」

「違わないじゃん」

全く。と呆れて溜め息だ。
いつもいつも、飄々と、ふらふらと。
こいつは気分屋の猫のよう。

「お前ェだって、とっくに見回り終わってるはずなんじゃねェんで?」

「あー、うん。報告は部下が行ったと思うけど。
てか、よく知ってるね」

「出掛け際にザキヤマが「あれ?」って首傾げてやした。
帰って来ねぇって」

「なるほど」

「仕事上がりにどこ寄ってんのかと思えば、ただぶらぶらなんて、よっぽどのヒマかィ。哀しいねェ」

「オイ。なんかムカツクなオイ。」

にやっにやとケンカを売ってくる馬鹿は、呆れる程にいつも通りだ。

「はぁー…本当呆れるわ…」

挨拶もせずに背を向けた。
相手にする気分ではなくて。

「ん?」

背後から、意外そうな声が聞こえて。

「じゃあねー」

振り向かぬままに、ひらひらと片手だけ上げて振ってみた。


私は確かにヒマだ。
もう仕事は上がって良い時間なのだから。
特にやることもない。
行く先もない。
ただ、まだ帰るつもりはない。
だから、ふらふらと歩くだけだ。


「……………」

「………」

「…………………………って、なんで着いて来るかな!」

「どんな面白いところに行くのかと思いやして」

「なにも、そんなとこ行かないから!」

別れたはずなのに、
さっきからずっと気配が消えないと思えば。
総悟がニヤニヤと着いてきていた。

「さぁ〜どうかな〜」

「別にどこも行かないから」

「毎日毎日、遅くまでふらふらと出掛けてるそうで?
気になるじゃねェですかィ」

「………っ」

あーもー、
アウトだ。
こうなった総悟はなかなか追っ払えない。
仕方ない。…仕方ない。

「………何、副長の指示で嗅ぎ回ってたの?」

「いんや?
単なる興味でさァ。
ザキヤマの奴がお前が最近どっかに行ってるみたいだって騒いでやしてね。
あわよくば弱味でも握ってやろうと」

「ほんとゲスいな!」

「ありがとうごぜェやす」

「ほめてない。」


頭が痛い。

もう仕方ない。

これはもう駄目だ。

諦めた私は、ん、と近くのファミレスを示して、総悟を誘った。

もう夕食時だ。
お腹も空いた。

たまにはコイツとご飯も悪くはない。






「あ。夢乃ちゃん、お帰り」

「ただいま」

「遅かったね」

「まぁ、ね」

「沖田さんも一緒だったの?」

「そ。すっかりたかられたわー」

「そっか、良いね。楽しそうで。
俺も行きたかったな」

「……勘弁して」

「あはは、その時は俺が奢るから」

「そ?期待してる。
じゃ、寝るね。お休み」

「うん。おやすみ。また明日」






いつも通り。が、

いつからかな。

いつも通りじゃなくなったのは。


退が、

私を特別に思ってくれてる気がしたのは、

いつのことだったか。



退が、優しいことは知ってる。

よく知ってる。

私を助けてくれることもある。

八つ当たりしても文句も言わない。

心配してくれる。

常に気にかけてくれる。



大事な人…だと、私も思ってる。


大事な、友人。だって。




「………私、……」


どうしたら良いのかな。

そんなつもりじゃなかったって、

私に言う資格あるのかな。


誰かから向けられる「好意」が苦手なんだって…そんなアホなこと、言える訳がなくて。

『好きだよ』

遠い過去にもらった好意の言葉。

有り難いと思った。
こんな私に、って。

でも、嬉しさはなくて。
あったのは底知れぬ恐怖心。


私は、誰かからの好意が怖い。
ひたすらに怖い。


大事に思う友人に、そんな恐怖を抱きたくはないんだ。

いつも通りにワイワイ楽しくしていたいんだ。


お願いだから、
そんな優しい目で見ないで。




お願いだから、
貴方の心を見せないで。







「私なんか、…最低だから。
だから。…」

ずっと孤独に生きるから。
誰かの温かさなんて望まないから。

布団に守られている間だけ。

心の中の消えそうな声を、出させてください。


「………………君だけは、どうか、幸せに。
私は、君を望まないから。
君の、幸せを望むよ、総悟」


だって。

優しい退の好意を怖いと拒絶する私が。

都合良く君に好意を向けられる訳がないじゃないか。


ましてや、君は私じゃない女の子を見ていて。


滑稽だね。

こんな設定で、どうして私は退を受け入れられないんだろう。

私が。

退を好きになれば。

退の好意を受け入れられれば。

全てが丸く収まるのにね。



どうして。


どうして。


毎夜毎夜、

君を想って、そればかり、

布団の中で呟いています。



.2016.5.27.

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