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r.short
背中に想うF あの時

あの時のことを、話そうか。





君は、骸と同じ術を使ったが

実際に殴れば一発。

弱すぎる。


しかし、

弱いくせに僕に屈しない君が、

僕は気に入らなかった。



君の見つめる先に、

彼がいると気付いたのは、

僕が君への想いに気付くのと

同じ頃だっただろう。


君への苛立ちは消えた。

『哀れだ』と、思った。















『由芽を風紀に?あいつが行くって言ったんですか?
‥‥‥‥‥‥え‥なんですかその微妙な反応っ!
‥ちょっと雲雀さん、無理矢理はダメですからね!?』

『だから、わざわざ君達に了解を得てるんじゃないか』

『すごく一方的な気がするんですけど!!』

『‥‥雲雀、俺はお前のためにあいつを連絡係にしたんじゃねーぞ。あいつがお前の側にいるのは、俺が頼んだからだ。‥勘違いするな』

『知ってるよ』

『連絡係!?ってリボーン、そんなことやらせてたのか!?』

『うるせーぞツナ。
とにかく雲雀、あいつの意志に反することを強要するなら俺が黙ってねぇ』

『随分入れ込んでるね、赤ん坊』

『‥あいつには‥大きな貸しがある。‥が。
お前には関係ねぇことだ』

『リボーンの言う通りですよ!
由芽もボンゴレの仲間です!「頂戴」なんて、物みたいに言‥』

『君に彼女を引き止める資格があるの?』

『‥え?』

『‥‥‥‥雲雀。』

『へぇ、やっぱり赤ん坊も知ってたんだね。
知らなかったのは君だけ?沢田綱吉』

『何を、ですか?』

『知らないことは、時に罪となる。君は知らずに彼女を追い詰めている』

『雲雀、いい加減にしろ』

『少し黙っててよ赤ん坊。
いいかい、沢田。由芽は君が好きなんだよ。とてもね』

『!?』

『君は彼女の気持ちに応えてあげられるのかい?‥‥笹川京子を捨てて』

『雲雀‥さ‥』

『それが出来るのなら、引き止めるなり何なり好きにすればいい。
だが、無理だろう?
君は彼女を愛せない。
いや、まず愛なんてもの、お子様な君には理解できないか』

『雲雀‥お前、』

『そうだよ、赤ん坊。
僕は本気だ』

『ま‥待ってください!俺は、確かに応えられないかもしれないけど、でも、それとこれとは‥』

『何、君、まさか応えられないけど手放さないなんて調子いいこと言うつもり?言っただろう、そんな資格はないって』

『だが雲雀、お前にだって一方的にあいつを縛る権利はねぇぞ』

『そうだね。だから、こうしよう。由芽がこの話を拒まなければ、決まり。異論があれば君達に直接言うようにさせるよ』

『‥‥‥‥いいだろう』

『沢田、君は?』

『‥‥雲雀さん、
雲雀さんは、由芽を幸せにしてやれるんですか?』

『これはまたお子様な質問だね。‥しかし。一応‥そのつもりだと、答えておこうか』

『‥‥‥‥雲雀さん‥お願いします。‥いつか‥彼女が、雲雀さんと幸せになって俺なんかのこと‥忘れ‥たら、「ありがとう」って、伝えてくれますか?』



















「『ありがとう』‥か」

「確かに伝えたからね」

「‥ってか。
もうどこに怒ったらいいのか教えて欲しいくらいだわ」

「そう?」

「あたしに嘘ついてたし、第一なんで沢田にあたしの気持ち教えちゃうの?だから風紀入った後から沢田の態度がおかしかったんだ」

「へぇ」

「反省してないし。
するわけないか。その半年後には告白も何もすっ飛ばして『君はもう僕のものだ』だもんね」

「よく覚えてるね」

「普通ならトラウマになってるわ」

普通なら、ね。
あたしは逃げなかった。
逃げないっていう選択をして、そして、それに恭弥はちゃんと気付いてくれた。


「仕方ないだろう。
君は、なかなか懐かなかった」

「人をペットみたいに言わないで」

「沢田みたいな草食動物には手に負えない」

「‥‥‥」

恭弥の背中に預けた重さをそっと引いて、背中同士が触れていたそこに手を置いた。
やっぱり、全然違う。

頼れる、安心感。

気まぐれで、まさに浮雲のような人だけど、こうしてあたしはしっかりと触れることが出来る。
隙間なく背中から抱きしめれば
無性に切なさが込み上げた。


「で、恭弥は、今あたしが幸せだと思うの?」

「違ったの?」

くすり、と笑ったのに気を取られていたら見事な早業で押し倒されていた。
からかうような恭弥の顔。


「沢田のこと。忘れてなんかないわ。‥忘れない。
沢田の力になるって決めたの。

だけど、‥‥‥愛してる。恭弥」

言うつもりなんかなかったのに。口が滑ったってこういうことだろうか。


「知ってる」

この男は一番「愛」なんてものから縁遠い人間だと思っていたのに。とんだ思い違いだった。


「必ず‥帰ってきてよね」

「誰に言ってるの」

「だって、こんな会話‥最後みたいじゃない」

「そんなくだらない真似、僕がするはずがない。
ただ、釘を刺しておかないとね」

「えーと?」

「過去の沢田綱吉なんて敵じゃないけど、過去の僕は、それなりに手強いからね。
まぁ君が今更子供に堕ちるとは思わないけど」

「え、何、あたしと過去の自分との浮気の心配?」

「浮気にはならない。どちらも僕だ。‥だから、わかる。
過去の僕は苛々していたからね。君に対して。もしこの時代の僕らの関係を知ったら、まず襲われるよ、君」

「‥は!?」

「骨抜きにされないようにね」

「ちょっ‥やっぱりダメ!
入れ代わり反対!」




君の居場所は、ここだ。


だから僕は必ず帰ると約束しよう。




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