最強ツンデレの敗北
ハ.初めて知った君
(さー今日も一楽一楽っ!
‥ん?あれってば‥)
夕方の修行を終えて帰ろうとして、森の少し奥で誰か手裏剣を投げている気配がした。
(こんなとこ、あったのか‥)
いつも気がつかなかったけれど、岩場の影にスペースがあって、必死に手裏剣を投げる女の子の姿があった。
一心不乱、というより、なんだか変だ。
手裏剣の修行くらいであんなにムキになるもんか?そりゃオレだってムキに修行するけど、そういうのはスゲー苦手で下手くそなときとかで。
現に、さっきからコイツは的から全く外さない。完璧なのに。
なにをそんなムキになるんだってばよ?
(たしか、眠利ユメ。スゲー忍者って本当だったんだな)
「っ!、タァっ!、」
(‥‥様子が、変だってば‥)
「ヤァっ!、‥っゎああぁーっ!」
思い切り叫んで投げた手裏剣は的に当たって、的は真っ二つに割れた。でも、あいつは投げた先を確認することもせずにうずくまってしまった。
泣いてる?
「‥っ‥‥なんでっ‥なんで!」
悲痛な声だった。
それ以上見ていられなくてオレはそっとその場を離れた。
「今から任務なの。夜にまた来るから。
ネジも行きたいって言ってたから連れてくるわね。
行ってきます」
病室を出て、息を吐く。
病院がこんなに空気の重いものだとは思っていなかった。
気の持ち様の問題だろうか。
病院。
希望と絶望が同居している場所。
「おはようございます」
「おはよう。ユメ」
任務をもらうために火影様のもとへ来たけれど、今日は私しか呼ばれていないみたいだ。
「任務なんだがな、
お前は少し休め、ユメ」
「火影様?」
「どういう状態かはわかっておる。あまり無理をするな」
「無理など!」
「‥ユメ、
‥‥側についていてやれ」
「‥‥‥‥」
火影様の言いたいことはわかる。こんな風に気持ちが落ち着かないまま任務に出たって、ミスをするかもしれない。それに、火影様の温かい配慮だってこともわかる。
だけど、
素直に、なれない。
どんな任務だっていい。
何か、全く違う何かに集中していないと泣いてしまいそうになるから。
私は忍者だ。‥忍者だから。
「‥‥ん‥」
しまった。いつの間に寝ちゃったんだろ。
(あー絶対顔に寝跡ついて‥)
「お、やっと起きたってばよ!」
「‥‥‥‥誰?」
目の前の席に知らない男の子が座っていた。
(見たことあるかも)
「オマエってば本当に失礼なヤツだな!いい加減オレのこと覚えろよ!つか、わざとか!?」
「‥私、人のこと覚えないから‥ごめんなさい」
「う、そんなに素直に謝られると調子狂う‥ってか、オレはうずまきナルト!将来、火影になる男だ!覚えろよな!」
(‥うずまきナルト、どこかで聞いたような?)
「私は、」
「知ってるってばよ!ユメだろ?」
とりあえず頷く。
なんだろうこの人。私まだ寝起きで頭ぼーっとしてるしなぁ。
「オマエさ、本当本好きなんだな」
「え?」
「オマエのこと初めて見たのもアカデミーの図書室だったし。
オレ、里の図書館来たの初めて。スゲー広いんだな、ここ。本だらけだってばよ!」
「‥そりゃ、図書館だし‥」
じゃあこの人、何しに来たんだろ?
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