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最強ツンデレの敗北
ル.涙腺未だ渇かず


最近の私は、おかしい。


(ぐるぐるだ。
それから、ぼうっとする‥)


せっかくまともに使えるようになった幻術も、Sランク任務じゃほとんど役に立たなかった。
もっと磨かなければ通用しない。

(でも、集中できない‥)

もう今日は何をやっても駄目かもしれない。走り込みだけにしようかな。


中忍試験以降、ネジは本家に出入りするようになり、あまり会えなくなった。

(今日のご飯、どうしよう。
一楽、行こうかな‥。‥ナルトがいるかも‥)


そこまで考えて、我に返る。
ナルトは今里にいないのだ。

やっぱり今日はおかしい。


ごろん。
横になると土の匂いがする。
木漏れ日がきらきらと眩しかった。






(私の殻に、ひびを入れた人‥)




鳥が飛んでいくのが木々の間から見える。




(ネジを闇から救い出した人‥)




うずまきナルトには信念がある。自分の忍道がある。夢がある。



久しぶりの休暇だった今日、初めてちゃんとリーを見舞った。

リーは今、自分と戦っている。

現実は非情だ。
ナルトと同じように、忍道があって、夢があるリーから全てを奪おうとして。

何もない私は中途半端に忍者をやっている。





忍は忍の道を生きる。しかし、それは己の人生でもある‥か。

私は忍だ。
‥私の人生って、なんだろう。



笑っちゃうくらい、何もない。







木の葉の里を守りたい。

私の里だもの。

三代目様が命を懸けて守った里。


里を守りたいって気持ちは忍者だって忍者じゃなくたって、関係ない。
それだけじゃ、忍者でいる理由にならないんだ。


‥‥私は、どうして忍者になりたかったんだっけ。





(ナルトに、会いたい)


今は自来也様と旅に出ているナルト。



(何考えてるんだろ、私‥)





思考だけが、取り留めもなく回り続けている。







(‥ナルトに会いたい。‥ナルトが好き‥)


ナルトが好きだ。

もうごまかせない。


これは、恋だと思う。




恋なんかしてる場合じゃないって、木の葉の現状を見たらわかる。

でも、気付いてしまった。





手を伸ばす。

私の手は何にも届かない。

木々は高く葉を揺らし、鳥は空を羽ばたく。そして、遥か彼方には太陽が輝いて。

遠い。遠すぎる。






こんな私では駄目なんだ。

こんな私は、何も出来ない。


私がナルトを好きでも。
私が木の葉の忍者でも。

それらに何の意味があるっていうのだろう。



‥もう嫌だ。


『逃げんな!』


ナルト。‥会いたいよ。














「ユメ、少しいいか?」

ネジの声。
いつの間に?

「うん」

「ってお前‥、地面に寝て何している?それも修行の一環か?」

「‥まさか。そんなわけないでしょう」

ネジが苦笑しながら側に立って見下ろしてくる。

(今の私は、きっとネジにも届かない)

手を伸ばそうとして、途中で止めた。

「どうした?‥‥ん?ユメ‥」

でも、ネジはそんな私の手をちゃんと掴んでくれた。

「ユメ、お前熱あるぞ!?」

「熱?」

ほら、と私の額当てを外して額に手を当てるネジ。

ネジの手が冷たかった。

「本当にしょうがないな、お前は」

強いくせに。ネジは笑う。

私は、強くないよ。ネジ。

「ほら、家まで送ってやるからしっかり掴まっていろ」

ネジの背は意外に広くて、訳もわからず込み上げる涙を堪えるのに必死だった。



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