連載A(青)
《兄視点》
「ありがとうございましたー。」
爽やかに去って行く宅配便のお兄さんを見送る王子の手には先程届けられた小包。
「ふふふ、どんな曲作ろうかな…楽しみだなぁ。」
嬉しくてワクワクする気持ちを出来るだけ押さえ、俺はそのままリビングのパソコンに直行した。
「あ!お兄ちゃん!それって《KAITO》?」
完成したオムライスを運びながら嬉しそうに瞳を輝かせる妹。
「あぁ!今届いたんだ。なぁ、姫、ここは平等にこのリビングのパソコンにインストールってのでいいか?」
うちの家にはパソコンは3台ある。
一つは2人で共有するここ、リビング。基本的には親からのメールを受け取ったりのやり取りするだけのやつだ。
残り2台は俺と姫、各自1台づつ自室に所持してる。
本音を言うと俺の部屋でインストールして部屋に籠りたいところだが、さっきの帰り道での会話もあるし、可愛い妹が拗ねるのでリビングにインストールしようと俺は考えた。
「うん!いいと思う!そのパソコンなら私も使えるもんね♪」
嬉しそうに頷く妹に微笑みかけ、即座にパソコンを起動。
「あ!お兄ちゃん!オムライスは?」
「ちょっと待って、インストールしたらすぐに食べるから…よしっ。」
カチカチと操作を済ませると王子はすぐに姫の向かい側に座った。
パソコンにはインストール中の文字。
「お兄ちゃん、インストール中って書いてあるけどいいの?」
「ん?あぁ、それ時間かかるんだよ。さ、食べようぜ!」
「そうなんだ?うん!じゃあ。」
「「いただきます!」」
―――
【数分後】
「「ご馳走さま(でした)!」」
「美味しかったぜ!姫♪」
「ほんと?よかったー♪じゃ、お兄ちゃんさっき買ってきたの食べる?」
食後のデザートとしてアイスをコンビニに購入していた俺たちは冷凍庫へと2人で向かった。
その時、インストールが終了しかかっていることに気付かずに…
「お前のやつ旨そうだな、あとで一口くれよ。」
「えー。いいけどお兄ちゃんのもわけてよね。」
そんな会話をしながらリビングに戻ってくると
パソコンの前に立つ自分よりも背の高い青年と目があった。
「あ、マスターおかえりなさい。」
「……お、お兄ちゃん、あれって…」
「マジかよ!なぁ、姫!夢じゃねぇのか?」
姫と俺は驚いた。
だってよぉ、あのさっきインストールしてた《KAITO》のパッケージと同じ姿の奴がいるんだぜ?
ま、パッケージよりはかなりリアルにイケメンで、某有名動画サイトで見掛けるような姿だが…
「どうしたんですか?マスター?」
きょとんと見つめてくる青くて綺麗な瞳…間違いねぇ、《KAITO》そのものだ!
「やったぁ!!カイト!よく来たな!!」
俺は勢いよくカイトに前から抱き着いた。
「うわッ、ま、マスター!?」
俺が飛び付いたせいか多少ぐらついたが普通に立って俺を支えてやがるカイト…
ちょっと背が高いからって…力の差もあんのかな。
俺、軽くショックだぜ…。
「あ!いいな!お兄ちゃん狡い!私も!いらっしゃいカイト♪」
今度は後ろから姫がカイトに抱き着き熱烈な歓迎をした。
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