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短編集・読み切り



「チッ、つまんねー…」


 ここでようやく高取が低く呟いた。

 達することがなかった岡本の耳がその声

を聞き逃すはずもなく、目隠しされたまま

の状態で声の主を探す。

 その姿はまさに飼い主の匂いを見つけた

飼い犬のようだ。


「高取君っ…?」


 驚きと喜びを隠しきれないように響く声

がかかっても高取本人の表情は不機嫌なま

まだ。

 島崎にイかされてしまえばよかったのに

と高取は本当に期待していたんだろうか。

 岡本の反応と高取の様子に完全に居場所

を失くした島崎は居心地悪そうに高取の視

線から顔を反らす。

 その視線の先がこちらに向いて、“ほら

見ろ”と机の上から見下ろしてやる。

 なんで今の今までそんな単純な事に気づ

かないんだと針のむしろにしてやりたい気

分だ。

 飼い主である高取自身がどう思っている

のかは別にして、犬である岡本には高取以

外はどうでもいいその他大勢だ。

 高取の前でその他大勢の内の一人に犯さ

れてイかされたとしても嬉しいはずがない。

 高取だけが絶対で、唯一無二な存在なの

だから。


「高取君…?いるのっ?

 こんなの嫌だっ。

 僕は君じゃなきゃ嫌だっ。

 君が…君が僕を見てもくれないなら、こ

 んなの耐えられないっ」


 目隠しをされたままの岡本の口から、普

段は絶対に聞けない言葉が漏れる。

 それは懇願のようでもあり、悲鳴のよう

にも聞こえた。

 しかしそのどちらであったとしても、そ

の他大勢はハッキリとその他大勢でしかな

いのだと言い放っている。

 飼い主と認めた高取以外には触れられた

くないと全身で叫んでいた。


「るっせーよ、変態のくせにっ。

 突っ込んでくれるなら誰でもいいだろ。

 さっさとイけっ」

「あッ、あぁッ…!」


 しかしそんな岡本の訴えを理解している

のかいないのか、当の高取は苛立ったよう

に岡本の乳●を抓り上げた。

 突如、痛みでビクッと体を震わせた岡本

が体を弓なりに反らせたと思ったらそそり

立っていたチ●ポから勢いよく精●を飛ば

す。

 高取と岡本本人以外は皆信じられないよ

うにそれを見つめる。

 あれだけ気持ちよさそうに島崎に突き上

げられ腰を揺すっていた時には決してイか

なかった岡本が、前戯もなくまして突き上

げられてもいないのに高取に罵られ乳●を

抓り上げられただけで簡単にイッてしまっ

た。

 本当に高取以外はどうでもいいのだと岡

本の体がハッキリと目に見える形で証明す

る。

 その空間には未だに岡本に突っ込んだま

まの島崎さえ存在を許されず、あまりの場

違いさに自業自得だと思っていた島崎をほ

んの少しだけ憐れんだ。

 岡本の中ではきっとその他大勢は空気よ

りも軽い存在だったのだ。





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あきゅろす。
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