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短編集・読み切り



 その日は5限目も6限目も島崎とは口を

きかなかった。

 俺は口をききたい気分じゃなかったし、

島崎は何か言いたそうな空気ではいたけど

結構口は開かなかった。

 そうこうしているうちに放課後になり、

いつもツルんでるうちの一人、ヒデが声を

かけてきた。


「な、な、今からどうする?」


 いつもなら2つ返事で皆と遊びに行くと

ころだが、生憎とそんな気分じゃない。


「オレはパス。

 今日はマンガ読みたいし」

「えーっ、ミツ来ないのかよぉ。

 島崎は?来るよな?」


 オレより僅か数センチ低い猿似のヒデ

は、まさか断られるとは思っていなかった

ように肩を落とす。

 率先して遊びに誘うのはヒデの役割とし

てすっかり定着しているが、断ったからと

いって後に引きずることはない。

 いい意味で程よい距離が保てるからこそ

皆が居心地よく過ごせているんだと思う。


「俺は…俺も今日は止めとこうかな」


 話を振られた島崎は迷ったふうに言葉を

切ったが、なんとなしに視線をむけたオレ

と目があうとこっちを見ながら誘いを断っ

た。

 ヒデは“島崎もかよぉ”とブツブツ文句

を言ってたけど、別に島崎が断ったのはオ

レのせいじゃないし。

 ほとんど教科書の入っていない薄い鞄を

掴んで二人を残したままさっさと教室を出

る。

 今は島崎と二人きりになりたくない。

 またあの話を蒸し返されたら苛立って何

を言うか自分でも分からないから。


「おい待てよ、ミツ!!」


 足早に教室を出たのに長いコンパスで直

ぐに追い付いてくる。

 やっぱり脚の長い奴って嫌いだ。


「うるさいな。

 マンガ読みたいって言ってるだろ。

 構ってほしいならヒデ達と行けよ」


 肩に鞄を掴んだ手をのせたまま振り返っ

て睨むと、それだけで島崎は歩み寄ろうと

していた足を止める。

 オレより頭1つ分デカイくせに相変わら

ず気の小ささはカエル並だ。


「あ、ゴメン…」


 すっかり勢いを削がれたらしい島崎にく

るりと背を向けるとそのまま学校を出た。





 マンガが読みたくなったら帰り道の途中

にあるマン喫と決まっている。

 ドリンクバーで炭酸飲料をたっぷり注ぐ

と、マンガを3冊ほど持って個室に向かう。

 狭い個室に鎮座している長椅子に座ると

机の上に足を投げ出して、持って入ったマ

ンガの1冊を捲った。


 ペラ…ペラ……


 読んでいても内容がちっとも頭に入って

こないのは読んだことがあるせいか、それ

とも正義感溢れる主人公が島崎を思い出さ

せてムシャクシャするからなのか。

 理由は分からなかったが読んでいても面

白くないマンガはさっさと放り出した。


 島崎は何を言おうとしていたのだろう。


 1人になるとその疑問がムクムクと頭を

もたげてくる。

 気になるなら聞いておけば良かったと思

わなくはないが、下手に弁明されたら余計

に言い返してしまいそうだったから、これ

で良かったんだとも思う。

 今さら善人面する島崎も、岡本達に変に

肩入れする島崎も見ていて不快だ。






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