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短編集・読み切り



 しかしそれで引かないのが馬鹿二人だっ

た。


「じゃあ高取は本当に岡本が知らない所で

 誰とヤッてても構わないんだな?

 どこかに連れ出したりとか」

「くどいッ。

 興味ねーって言ってるだろっ」


 馬鹿が念押しすると高取もさすがに我慢

の限界だったのか座っていた椅子を蹴って

教室を出ていった。

 バンッと壊れそうな勢いてドアを開いて

足音が遠ざかっていく。

 もうそこまでいくとフォローどころか近

づきたくもない。

 むしろ寄ってくるなと言いたい。

 同意を求めてこっち見んな。


「いこ、島崎」

「あ、う、うん…」


 何か言いたげな馬鹿にこれ以上構ってや

るだけ無駄だと島崎の手を引っ張っていく。

 どちらにしても授業がもう始まるのだか

ら遅かれ早かれ皆がこの教室を出ることに

なる。

 サボるつもりがなければ、だが。

 だったら今出ていっても何も問題はない

だろう。


「なぁ、ミツ」

「ん?」

「高取ってさ、ホントに岡本の事なんとも

 思ってないのかな?」


 馬鹿二人から離れたと思ったのに馬鹿な

言葉が飛び込んできて思わず足を止めてし

まった。

 危うくぶつかりかけた島崎が何か文句を

言っているけどそんなことはどうでもいい。


「なに?

 島崎まであの馬鹿菌にやられたの?

 いいじゃん、高取と岡本のことなんだか

 ら。

 ほっときなよ」

「でもさ、なんかこのままじゃ報われない

 気がしてさ。

 岡本ってあんなに尽くしてるのにあんな

 こと言われたらショックじゃないかなー

 って」

「呆れた…。

 一番最初に皆でヤッた時にそんな気持ち

 は捨てたと思ってたよ。

 いいじゃん、岡本だって納得してやって

 んでしょ。

 嫌だったらとっくにやめてるって」


 そもそもの始まりのことを言われたらさ

すがに言い返せなかったらしい島崎はそれ

で押し黙る。

 今になって岡本に同情してみせたってそ

れはただの偽善でしかない。

 否と言いたいなら一番最初のあの時に手

を引くべきだった。

 泣き叫んでいた岡本を押さえつけて、叫

び疲れるまで犯し続けた、あの日あの場に

いた岡本を除いた全員が加害者だ。

 それを棚上げして善人面しないでほしい。

 あの馬鹿二人よりタチが悪い。


「別に島崎が岡本に肩入れして、“自分が

 幸せにしてやる!”とか言うなら止めな

 いけどさ、そうじゃないのにそういうの

 ってちょっと違うんじゃない?」

「そう、だけど」


 煮え切らない島崎に畳み掛けてみたけれ

どまだゴニョゴニョと言い淀んでいる。

 もう何か言うのも面倒で掴んでいた手を

離すとそのまま島崎を置き去りにして歩き

出した。


「ミツ…!」


 後方から足音と声が追いかけてくるけど

今は何も話したくなかった。

 胸の内がモヤモヤする。

 岡本の事も高取の事も、放っておけばい

いのに。

 その時が楽しければいいじゃないか。

 みんな囚われ過ぎだ。

 島崎も、馬鹿二人も。







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あきゅろす。
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