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短編集・読み切り



 そんな会話をしたことなどオレはすっか

り忘れていたんだけど島崎の方はずっと気

になっていたらしく、自分で調べられる範

囲で色々と調べていたようだ。

 …まぁそれが実を結んだことはなかった

ようだけれども。

 しかしその論争が起こったのはそんな折

だった。

 高取の許しを得て教室を出ていった岡本

の背中を見ていたらバカ二人が高取に聞か

せたいように声高に会話を始めたのだ。


「だけどよ、ホントに岡本って高取の言い

 なりだよな。

 なんなんだろうな、あれ?」

「だよなー。

 なんか岡本が高取を見る時って目が違く

 ね?」

「やめろよ、気色悪い」


 会話を遮った高取は機嫌が悪そうに眉根

を寄せるが空気を読まないバカ二人の口は

その程度では止まらない。

 視線で何かを会話したような間の後で冗

談で言ってるんじゃないという空気を作る。


「でもよ、マジでなんか違うんだって。

 お前らって本当に“そういう関係”じゃ

 ねーの?」

「…殴られたいのか?」


 きっとバカ二人の言うことはここにいる

高取を除く全員が考えている事だろう。

 だが考えているからといってわざわざ蛇

がいるとわかっている藪をつつく真似はし

ない。

 高取と岡本の仲が何らかの形に変わるこ

とがあって、こんなふうに岡本を性欲の捌

け口にすることがなくなったとしてもそれ

は当然の結果として受け入れるべきだ。

 そもそも今の関係がおかしいのだから。

 バカ二人は自分たちはノンケだと声高に

語り、常に彼女…というよりヤラせてくれ

る女を探している。

 だったら岡本をマワすのなんてやめれば

いいのに、岡本はオナホ代わりだからいい

んだとか訳の分からない理屈をこねては真

っ先に高取の所に岡本をマワそうと言いに

行く。

 たまにあの二人は底抜けの馬鹿なんじゃ

ないかと眉をひそめたくもなるが、そうい

うところを除けば決して悪い奴らではない。

 除けば、だから今は問題なのだが。

 高取が低く唸るような声で睨んだことで

ようやくやりすぎたと思ったのかバカ二人

は押し黙った。

 どんどん鋭さを増していく空気に冷や冷

やとしていたが、ようやくバカ二人が黙っ

たと張りつめていた空気が緩む。

 もう次の授業が始めるだろうし、そろそ

ろ引き上げようかと島崎と目配せしている

横で信じられない声が響いた。


「だけどさ、この前お前が早退した日あっ

 たじゃん?

 眠いっつって帰った日。

 あの日に岡本呼び出したんだけど、結局

 逃げ出したんだぜ?」


 馬鹿だ。本気で馬鹿だ。

 あと数分位その底抜けに馬鹿な口を閉ざ

していられないのかと睨んだが、お前らも

そう思うだろう?と空気を読めない目に問

われる。

 お前ら馬鹿二人とくれぐれも一緒にしな

いでほしい。

 ついでにその日は馬鹿二人で誘いに行っ

て頷かない岡本に高取の指示だと嘘をつい

て連れ出し、結局それがバレて逃げ出した

というみっともないオチがついている。

 岡本に手を出したいと思う度に高取にお

伺いを立てなければならないのが不満だと

言っていたが、そんなのは高取につっかか

る方がお門違いというものだ。

 これ以上恥を晒すことはないと思うのだ

がやっぱり馬鹿は治らないらしい。


「知らねーよ。俺は関係ないだろ、ボケ。

 岡本が俺がいなきゃ嫌だとでも言ったの

 かよ。違うだろ。

 岡本が俺のいないところで誰に掘られよ

 うが死ぬほど興味ねーし」


 もう高取の声が低すぎてとても顔など見

れない。

 きっと視線で射殺せるだけの鋭さで馬鹿

二人を睨んでいることだろう。

 さすがに馬鹿二人の顔が引きつっている。





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