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短編集・読み切り



「待て」


 すっかり汚れてしまったシャツのボタン

をとめている岡本の手を彼が遮った。

 言われるまま手を止めた岡本が見ている

前で黒いマジックペンのキャップを抜いた。

 黙って見つめる岡本は抗う様子もなく、

そんな彼の胸に迷うことなく高取はペン先

を押し付け滑らせていく。

 白い肌の上に太いマーカーの黒がクッキ

リと映える。

 高取は書きたいことを書き上げると満足

げに笑って半分ほどインクの溜まったマジ

ックペンのキャップを閉めた。


 “口は精●便所”


 今しがたまで散々揺さぶられていた青年

の顔が赤らむ。

 文句を言うどころかその鼓動がドクンと

跳ねたのを知っているのは本人だけだ。


「さて、何人分の精●がその腹に収まるか

 な」

「……」


 意地悪くほくそ笑む彼を前に岡本は何も

言わない。

 反発も拒否も、希望さえも。

 高取のしたいようにしてほしい。

 それが岡本自身の望みだから。


「明日も学校来いよ、岡本」

「うん…」


 彼は逃げ出すなよと釘を刺すが、学校以

外で彼との接点がない岡本にとってそんな

ことは思いつきもしないことだった。

 言いたいことだけを一方的に告げて高取

はさっさと立ち去った。

 まだ汚れも洗い流していない乱れたまま

の姿の岡本を夜の公園に残して。




「うぁ…っ。

 なんかさ、コイツのフェラ上手くなって

 ねぇ?」

「ケツも、ぅっ、よく締まるわ。

 たまにもってかれそーになる」


 昼休みの空き教室でよくつるんでいる数

人が順繰りに岡本の口や尻の穴を穿ってい

く。

 高取はいつものようにそれを眺めている

だけで自分は加わりはしない。

 岡本の体に毎日落書きをしているわけで

はないが、高取が来いと言いさえすれば岡

本は大人しくついてくる。

 岡本が大人しく従うのは、いじめが直接

的な暴力へ変わるのを恐れてだろうと考え

ながら高取は岡本が悪友たちに犯されるの

を静観していた。

 1対1ならともかく、この人数に暴力を

振るわれたら間違いなく袋叩きだ。

 校内でもそこそこ顔を知られているレベ

ルの不良である自覚はあった。


「一晩中知らない奴らのしゃぶらせたこと

 もあるからな。

 慣れだろ」


 あくまで日常会話として真顔でサラリと

流しただけの高取に、彼の口内を犯してい

る野坂が腰を振りながら肩をすくめんばか

りの顔をする。


「うへぇ…。

 オレは1人でも無理だわ。

 岡本の変態っぷりもアレだけど、高取の

 鬼畜っぷりも容赦なくなってくな」

「言ってろ。

 その変態の口で勃●してるくせによ」


 からかう悪友の声に憮然とした軽口で返

す。

 事実を指摘された野坂は苦笑いを浮かべ

てそれ以上は何も言わずに腰を使った。





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