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短編集・読み切り



「暇ならヒデに付き合ってやればよかった

 のに」

「まぁ、それはそうかもしれないけど。

 …最近ミツと全然遊べてなかったから、

 ミツに時間あったら一緒に遊びたいなっ

 て思って」


 遊ぶって…ボーリング場でトイレに連れ

込むなり開口一番ヤラせてくれって頼み込

む島崎が何を考えてたかなんて想像に容易

いけれど。


「…いくら暇でも、お前にヤラせてくれっ

 て頼まれたって頷かねーけど」

「そっ、それはまた別の話で!

 …放課後は文化祭の準備で忙しいのに、

 休み時間も秋口と喋ってることが多いし」


 そんなこと言っても仕方ないだろ。

 担任の方針でクラス全員に何らかの仕事

が割り振られているから、どう転んでも係

や委員の仕事はこなさなければならない。

 オレはたまたまそれが文化祭の実行委員

ってだけの話で。

 秋口は季節外れの転校生で、たまたま席

が近くて何かと話しかけてくるから応じて

いるだけだ。

 市内のお坊っちゃま学校からの転校生ら

しいが、まだ転校してきたばかりで色々と

分からないことが多いのだろうし、それは

仕方のないことだとも思う。

 別に秋口のことは嫌いではないし話しか

けられれば会話くらいする。

 …夏休みに色々あった島崎とどう接して

いいのか未だに少し迷っているというのも

本心なのだが。


「ミツが良ければ、日曜日一緒に遊びたい」

「日曜…別にいいけど。

 でもエロいのはナシだからな」


 日曜日に何か用事があったかと思考を巡

らせ、特に何もなかったと島崎の誘いを受

ける。

 が、念の為と付け加えると島崎が露骨な

顔で“えーっ”と呟く。

 もう呆れるばかりで、隣に座っていたな

ら頭を叩いていただろう。

 テーブルを挟んで向かいだったから手は

出さなかったけど。


「そんなに抜きたいならオナホでも買え、

 チ●ポ脳」

「オナホじゃなくてミツがいいんだってば!

 ミツと一緒に気持ちよくなりたいの!」


 ブンブンと首を横に振って力説される。

 しかし内容があんまりで脱力するしかな

い。

 ホント、二人きりになると島崎の思考回

路はそっちにしか働かなくなったのだろう

か。

 これはこれで問題だな、と心の奥で唸っ

た。

 島崎がオレをどんな目で見ているのか何

を望んでいるのか、そんなの考えずともわ

かる。

 けれど島崎がオレに欲情することに嫌悪

感はないし、むしろオレだってそういう目

で島崎を見ていないのかと聞かれたら答え

はNOだ。

 けれど以前に島崎のケツ穴を弄った時に

露骨にあんなに萎えられてしまった経験も

含めて考えると、オレが島崎に突っ込んで

イカせるっていうのも現実的ではない気が

する。

 そりゃ島崎がオレのチ●ポに突かれて絶

頂する素養があるならやってみたい。

 でもその選択肢が実質的に消えてしまっ

ている現状では、オレ自身の欲求はとても

中途半端でオレ自身も持て余している。

 島崎と純粋に抜きっこするだけならオレ

だってしたいし、抵抗はない。

 けれど、島崎はその先を望んでいる。

 もしかしたら、頭の中はそれでいっぱい

なのかもしれないとさえ思える。

 次のステップへ進みたい島崎の欲望と様

々な恐怖や嫌悪感からNOと断り続けるオ

レの攻防はとても危うい。


「何度も言うけど、オレはケツにチ●ポ突

 っ込まれて喜ぶ変態じゃない。

 いい加減にしろっての」

「今はまだいいからっ。

 まだそこまでいきたいなんて言わないし。

 ただいずれは慣れてくれたらなとは思う

 けど」


 “今は”って、なんだ。

 コイツ、ホントにボコりたい。


「次に変な真似したらケツ穴にペットボト

 ル突っ込むからなー」

「ちょっ、それ酷くないっ!?

 俺のケツ壊れちゃう…!」


 釘を刺すオレに島崎はテーブルに手をつ

いて身を乗り出して来る。

 もう心の底から呆れ果てて無言で島崎を

睨んだ。

 そこまですると言われてもまだ諦めない

のかと、何か言う事さえ億劫だ。

 “そんなにケツに突っ込みたいなら、岡

本に土下座して頼めば?”

 その言葉が喉元までせりあがってくる。

 言わないけど。

 でも、ムカつく。


「あのさ…あのとき気持ち良くなかった?」


 おずおずと尋ねられた言葉の意味を理解

するのに一瞬、その直後にテーブルの下か

ら膝を伸ばして島崎の脚を蹴りつけていた。


「アホ。

 どうしても分からないって言うなら、ま

 たお前のケツ穴に何か突っ込んでやるけ

 ど?」

「俺の話じゃなくてっ。

 だってミツは、奥にちゃんと気持ち良く

 なる場所あったじゃん?」


 口をつけようと持ち上げていたマグカッ

プの中身をその顔にぶっかけてやりたくな

ったが、堪えた。

 バカ島崎はどうでもいいけど、片づけし

なきゃならないのは間違いなくオレだから。


「バカじゃないの?

 ていうか、バカ。

 呆れるレベルでバカ!」

「ミツが気持ち良くなかったんなら、気持

 ち良くなれるように俺も頑張るからさ。

 だから」


 耳の奥で何かがブツッとブチ切れた。


「 か え れ 」


 飲みかけのマグカップを持って立ち上が

る。

 これ以上コイツと何を話しても無駄だ。

 それが嫌というほど分かった。

 ちょっと悪ふざけしすぎたからなんて仏

心を出したのが間違いだった。

 島崎の脳内はただただピンクの欲求でい

っぱいなのだ。

 その思考回路にオレの感情とか都合とか

いったものはほぼ存在していないに違いな

い。

 それがあからさますぎて我慢できない。

 そんなにヤリたいならオナホでも使って

ろ!

 行為そのものに相手への気持ちや気遣い

がないなら自慰と一緒だ。

 相手が何を望み、何を求めているのか。

 それを考える余裕がないなら、いっそ永

遠に右手を恋人にしておけと怒鳴ってしま

いたい。

 相手の同意も得ずにただ突っ込みたいの

だというなら、岡本を皆でマワしたあの夜

の思考回路にとても近い。

 ただ島崎がヘタレで、オレにやすやすと

手を出せずにいるから未遂になってきたと

いうだけで。

 …それともこれは罰なのか。

 クラスメイトをよってたかって輪姦して、

その罪も償わないまま日常に戻ろうなんて

ムシが良すぎるのか。

 岡本で性欲を解消できなくなった島崎が

背格好の近いオレに同じ目を向けるように

なったのは自然な流れだったのか。

 それともバカ二人のように“やっぱり男

より女がいい”としっかり線引きしなかっ

たオレの選択が間違っていたのか。

 …そりゃそうだ。

 普通、ただの友達相手に欲情したりしな

い。

 セックスしてる時のことを思い出して自

慰することも、ない。 

 島崎がどうのと言う以前に、オレが線引

きを間違えた…その事実が胸をチクチクを

刺した。

 それはとりあえず後回しだ、と心に蓋を

被せる。





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