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短編集・読み切り



 心中で行き場のない羞恥に炙られ喘ぐ私

の耳にまるで悪魔のような声音が降ってき

た。


「さぁ、卑猥なおねだりをもう一度してみ

 てよ、センセ。

 今度はちゃんと言い終わるまで待ってて

 あげるからさ?」


 ドクンッ。


 心臓が、鈍い音をたてた。

 喉がカラカラと乾いていくのに、楽しげ

な彼の声が首元に巻き付いて離れない。

 本当に逃げられない所まで追いつめて、

そのまま真綿のように締め上げるのが楽し

いとでもいうように。


 彼の言いなりになってはならない。

 けれど彼の言いなりにならなければ終わ

らない。

 まるで言い訳のように繰り返して、体の

奥に燻る熱に気づかないフリをした。

 性器が反応しているのは擦られたから、

咥えこんで締め付けてしまうのは何度も奥

を突かれて体が反射的に反応してしまうか

ら。

 腰が揺れてしまったのは、撃ちつけられ

る衝撃を逃がす為。

 それを彼は都合よく勘違いしているだけ

で、これ以上彼を刺激せず速やかに行為を

終わらせ解放させる為には致し方ない…。


「わ、私の卑しい尻…穴を逞しいおちん

 ちんで、グチャグチャに…お、犯してく

 ださい…」


 耳が火で炙られる様な心地で詰まりなが

らもなんとか最後まで言い終えた。

 喉が渇き声は尻すぼみになってしまった

けれど、なんとか言葉として絞り出す。

 しかし背中の向こうの彼はそれを鼻で笑

った。


「もっとちゃんとセンセの言葉でおねだり

 してよ。

 俺がもっとセンセを犯したくなるような

 扇情的なヤツね。

 もう欲しくてたまらないんデショ?」


 真綿で首を絞めるような声で囁いて抜き

かけの熱棒で縁を押し広げるように刺激す

る。

 咄嗟にもっと奥へと腰を突き出してしま

い、言い訳すら入り込む隙のない動きに彼

も気づいたのだろう。

 耐えきれないように笑い声を滲ませて耳

の縁に甘く咬みついてきた。

 ゾクゾクと今まで感じたことのない甘美

な痺れが背中から這い上がって脳の隅々ま

で行き渡った。


「ほら、早く」


 その言葉で甘く痺れそうになる脳に喝を

入れる。

 これはあくまでもパフォーマンスだと。

 解放されるための手段であって、自ら望

んでいるわけではない。

 彼はそれを自分で選んだのだと都合よく

解釈させたいだけなのだ。

 だから彼を刺激せずに、一刻も早く解放

を望むのならば彼に従順になったフリをし

なければいけないと。

 …そうでなければならない。

 こんなことをされて、言われて、私自身

が快楽を感じてそれ以上を望むことなどあ

ってはならない。


「奥までグチャグチャにして下さい…っ。

 その硬くて熱いのでいっぱい突いて、も

 っと気持ち良くしてください…!」


 自分が何を口走っているのか、考えるだ

けで顔が茹る。

 それでも余計に駆け足になっていく鼓動

は羞恥や屈辱の影から何か別の感情を引き

ずり出しそうで、キュッと唇を噛んだ。

 気づいてはいけない。

 これは言わされた言葉で、一刻も早く終

わらせたくて言っただけだ。


「気持ち良くするだけでいいんだ?

 あぁ、でもセンセはマゾだから擦ってあ

 げなくてもイけるのかな?」


 指先で突かれて驚いた下半身がビクビク

と震える。

 その様子にクスッと笑って、彼の手が再

び腰を掴んだ。


「まだ物足りないけど、初めてだから許し

 てあげるよ。

 ご褒美、ちゃんと味わいなね?」


 言い終わるやいなや、肉棒を包み込んで

いた粘膜を圧迫感を伴う熱量が一気に貫い

た。

 打ち付けられた腰の動きに一瞬目の前が

真っ白になる。

 しかし休む間もなく打ち付けられる熱量

を体は歓喜して受け入れ懸命に締め付けて、

乞うように腰を揺らした。

 性器を刺激し放ってすぐに途切れてしま

う快楽ではない、断続的な波に感覚が呑ま

れていく。

 今まで味わったことのない脳を痺れさせ

る快楽が隅々まで流れ込み、抉るように突

き上げては粘膜を捲るようにして引いてい

くその熱棒をむしゃぶりつくように下半身

で味わった。





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