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短編集・読み切り



「何それ…」


 だったら、どうしろというのか。


「気持ち良ければ、それでいいじゃん?」


 こう答える以外の正解って何だろう。

 変化を求めながら、それ以上に変化を恐

れているオレが島崎に返せる言葉。

 オレが望むその感情からは程遠いであろ

う島崎を納得させられるだけの、繋ぎ止め

ておくための言葉。

 気持ち良ければ…それでいいじゃないか。

 その言葉は嘘じゃない。

 島崎だってそのつもりだろうし、それ以

外の感情なんて今のオレ達の間にはないは

ずだ。

 優しい言葉をかけられて絆されて、望み

どおりにヤラせてくれる相手がいいのなら

そういう相手を探せばいい。

 そうしてオレ達はただの…友達に戻れば

いいのだから。


「じゃあ、どうしてそんな顔してるの?」


 戸惑う眼差しを向ける島崎の掌が頬に触

れた。

 心配そうな、何も気づいてない手の感触。

 いつもバカでアホで、でも時々驚くほど

に物事の本質を見ていたりして。

 それでもオレの気持ちには驚くほどに鈍

い。

 オレはそれに救われたり安堵したり…傷

ついたりする。

 何も言わずに察して欲しいなんて我儘は

言わない。

 でも何も気づかない的外れな優しさがオ

レの弱さを浮き彫りにして苦しい。

 それともこれは弱いオレへの罰なのか。


「何それ?

 オレはフツーだし。

 お前、オレと抜きっこしたいんじゃない

 の?」



 頬に触れる島崎の手を掴んで引き離す。


「そうだけど…ミツがなんか暗いから心配

 で」

「オレはいつも通りだって言ってるだろ。

 それとも気分が削がれたから、もうやめ

 とく?」


 そう、いつも通り。

 一歩も進もうとしないのも、進めないの

も。

 島崎の言葉に被せるように自嘲して、こ

れ以上このやりとりをしても不毛だと暗に

示す。

 まぁ鈍い島崎にオレの真意なんて分かり

はしないだろうけど。


「うーん…」

「……」


 苦笑いを噛み潰したような、なんとも言

えない表情で島崎は返答に迷う。

 理性と性欲がせめぎ合っているのが手に

取るようにわかる。

 本当に単純だ。

 そしてこれが現実だ。


「まぁ…じゃあ、いいや」


 困った顔で笑いながら静かに島崎が呟く。

 その言葉に心の奥底がズキリと痛んで苦

い気持ちが喉元まで込み上げてくる。

 島崎からしてみたら、きっと我儘を言う

オレの言い分を変えることが出来なくて、

それでもいいかと諦めたのだろう。

 それでいいのに、それが辛い。

 我ながらなんて我儘だろうと呆れるけれ

ど、オレ自身の弱さが島崎越しにオレを傷

つける。

 顔を近づいてきた島崎は横を向いたまま

のオレの頬にそっとキスをする。

 オレを説得するのは諦めたけど、抜きっ

こは諦めないつもりらしい。

 性欲に従順な島崎らしい選択だ。

 己の胸の奥の痛みから強引に意識を引き

剥がして、伏せ目がちに島崎の方へと顔を

向ける。

 そのまま再び近づいてこようとした唇に

キスをするつもりかと身構えたが、その唇

はそのまま下におりて首筋に触れた。


「気持ちいい?」

「くすぐったい」


 首筋にキスしたり舐めたりしてるけど、

まるで大型犬にじゃれつかれているようで

快楽とは程遠い。

 どちらかと言えば、かかる鼻息のせいで

くすぐったい。


「じゃあ、ここは?」

「んっ…」


 捲り上げたパジャマのすぐ下、少し前ま

で唇や舌で尖らせていたその突起を再び口

に含んで吸い上げてきた。

 しかもまだうっすら島崎の唾液で濡れた

もう片方を指の腹で捏ね回される。

 肌の奥で鼓動が少しずつ早くなっていく

のが島崎にバレないか、それが気になりな

がらも今まで自分でも弄ったことがないよ

うな場所が弄られて尖りながらその刺激を

体がもっとと欲しがり始めていることに戸

惑う。

 直接チ●コを弄られるのとは違う種類の、

弄られて敏感になった場所を舐められたり

吸われたり押し潰されたりする感覚。

 尖る乳首の中に神経の小さな芯が出来て

そこを直接弄られているような、そんな感

覚だ。

 体がそんな場所を弄られることが快楽だ

と覚えてしまう前に早くやめさせないと。


「そこは、もういいって…っ」

「でもミツが気持ち良さそうだし」


 オレの尖った乳首をくわえたまま喋る島

崎に文句の一つでも言ってやりたかったけ

ど、島崎の口の中で尖ったそれをやんわり

甘咬みされて喉が震えた。

 胸から引き剥がしたい島崎の髪に指を埋

めても指先に力が入らない。


「だか、らっ…や、ぁっ…」


 尖る乳首の感触が楽しいのか、オレが嫌

だと言うのも聞かずに島崎は甘咬みをやめ

ない。

 ともすれば肌を伝いそうな唾液をオレの

乳首ごと啜り上げてオレの抵抗力を奪って

いく。

 もう嫌だ。

 そんなところで感じたくない。

 そう思っているのに島崎の髪に埋めた手

に力が入らない。

 触って欲しいのはそこじゃなくて…。





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