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短編集・読み切り



「そういえばさー、覚えてる?

 この夏休み中はオレのいうこと何でも聞

 くんだよね?」

「え?そんなこと…言ったっけ?」


 島崎は怯えた表情のまま固まる。

 バカ島崎が鳥頭で本当に忘れているのか、

それとも忘れたフリでなかったとこにしよ

うとしてるのかは不明だ。

 どっちにしろ懇切丁寧に思い出させてあ

げるだけだから関係ないけど。


「す・ま・た、してあげたよね?

 出すもの出したら忘れちゃうのかなー、

 島崎の頭は?」

「えっ…と、あれって本気だったの?」

「冗談だと思う方がどうかしてるよね?」


 “あれだけで一か月も?”と言いたげな

島崎にニッコリ笑って言い返してやる。

 そもそも夏休み中と言ったってもう半分

は終わってしまったというのに何言ってる

んだと言ってやりたい。

 まだ何か言いたげな島崎に“チ●コって

握り潰したらどんな形になると思うー?”

と擦りながら尋ねてやったら元気だった股

間ごと竦み上がって黙り込んだ。

 本当に調子がいい奴だと思う。

 その場限りの快楽の為に色んなものを誤

魔化したり踏み倒したりしながら生きてい

くつもりなんだろうか。

 少なくともオレ相手にそんな誤魔化しは

通用しないのだと頭ではなく体に教え込む

必要がありそうだ。


「キス、していいよ?」

「え゛っ?」

「したかったんでしょ?

 していいってば」


 ヒクリ、と島崎の口の端が震える。

 それに気づいているけど完全にスルーし

て島崎の胸倉を掴んで引き寄せる。


「いや、いいって。

 なんか…怒ってるだろ、ミツ」

「寝てるところを勝手にされるよりマシだ

 し」


 ニッコリと笑顔を浮かべて完全に逃げ腰

の島崎のパジャマをグイと引き寄せた。

 しかし肝心の島崎はすっかり逃げ腰で、

苦笑いを浮かべながら言い訳や逃げ道を探

しているように沈黙する。


 オレの許可なく勝手にキスしてきたくせ

に…。

 それとも何?

 起きてるオレにはキスしたくないってこ

と?


 モヤモヤとイライラが頭の中で混ざりな

がら渦巻く。
 
 自分の気持ちは分からないと言いながら

オレに欲情する一方で街中を歩くミニスカ

の女子高生にも平気で視線を奪われる。

 いっそバカ二人のように“突っ込める穴

さえあればいいんだ”と開き直ってくれた

ら俺だって諦めて…いや、割り切って抜き

っこの相手位ならしてやるのに。



「んぅっ」


 逃げの一手を探る島崎に苛立って掴んだ

ままのパジャマの前をグイッと引き寄せて

唇を塞ぎ返した。

 突然引っ張られてバランスを崩した島崎

がそれでもギリギリのところで踏ん張って

くれたおかげで顔面衝突だけは避けられた。

 強張ったままやや開きかけの唇に咬みつ

くようにキスをすると唇越しに島崎の体の

震えがダイレクトに伝わってきた。

 それでも構わず島崎のパジャマを引き寄

せたまま、今度は味わうようにゆっくりと

繰り返し舌を滑らせると硬直したままだっ

た島崎の体から徐々に力が抜けていく。

 オレの唾液まみれになった島崎の唇を軽

く吸うと解けるような吐息が島崎の鼻を抜

けていき、再び島崎の唇を味わおうとのせ

た舌先を今度は島崎の唇が伸ばした舌先に

吸い付いてきた。


「ん…っ」


 …ちゅっ。

 オレの舌を吸いながら島崎が唇を離すと

恥ずかしいようなリップ音がやけにクリア

に耳を擽る。

 舌先の甘い痺れと共にその面映ゆい感覚

を味わいながら鼻先が触れる距離で島崎と

視線を絡ませる。

 言葉はなかったが物足りなさを感じてい

るのはオレだけではないと悟る。

 島崎が顔を傾けて角度を変えつつ空いて

いた方の手でオレの顎にそっと触れた。

 間もなくオレの唇に覆いかぶさるように

して再び唇が重なり、半開きにした口内に

島崎の舌を誘い込んだ。

 正式なキスの作法なんてわからない。

 けれど憚ることなく濡れた音を響かせな

がら互いに粘膜で相手の粘膜を味わう。

 体温も唾液も、吐息すら逃したくなくて

もどかしくもっととねだる。

 熱っぽい快楽に呑まれて頭の芯まで火照

っていく。

 唾液で濡れる唇の隙間から熱い吐息で熱

を少しでも逃がそうとするけど間に合わな

い。

 苛立ちもそうじゃない感情も快楽で霞ん

で、ふわふわと地に足のつかない感覚で尚

も島崎の唇を、舌を、歯列を、内頬を、唾

液を味い尽くした。





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あきゅろす。
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