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短編集・読み切り



「えーっとアクション、シューティング、

 格ゲー…」


 取り繕うように指折り数えているけど、

数えるほどあるってことはゲーム好きなん

だろうか。


「島崎って意外とゲームとかできるんだ?」

「できるっていうのかはわかんないけど…

 気になったのをちょっとやった位かな。

 ほら俺って飽きっぽいから、やり込んで

 るのかっていうと違うし」


 確かにバカ島崎が画面にかじりついてい

る姿なんて想像できない。

 島崎がプロ並みのテクニックでゲームを

クリアしていたら素直に引く。

 いや島崎にしてみたら失礼な話かもしれ

ないけど。



 そんなわけで昼食の片づけの後に家庭用

のゲーム機を持ってきた島崎と一緒に島崎

がテキトーに選んできたゲームをプレイし

た。

 最初はシューティングゲーム。

 ゲーム開始の難易度は確かに初心者向け

だったのだけど、ステージが進むごとに難

易度が急上昇していった。

 障害物、敵キャラ、画面を埋め尽くして

いく弾幕。

 被弾して破壊された戦闘機は数知れず。

 しかし2人ならではの協力プレイ(別名:

囮作戦)でステージをクリアしていった。

 それでも敵の弾が画面の大半を埋め尽く

すレベルにまでなってくるとだいぶクリア

は難しい。

 ラスボスに到達するこのステージで1人

プレイをしていた島崎は力尽きたのだとい

う。

 それもあってラスボスが画面に登場した

時の島崎のテンションは最高潮で、隣に座

ってたオレでも煩いと思ったくらいだ。

 そこからラスボス撃破できたのかという

と、喜びすぎた島崎の凡ミスで機体を撃ち

落とされ残機0でゲームオーバーという実

に島崎らしいオチがついた。

 島崎は悔しそうにしていたけど、だから

といってまた一番最初のステージからやり

直すだけの気力がオレの中には残っていな

かった。

 “また今度”という言葉でようやく引き

下がった島崎に麦茶を頼んでいる間に島崎

が持ってきていたいくつかのゲームソフト

をチェックする。

 せっかく島崎の補習が終わって家族不在

の家で何でもできる…ようになったという

のに暇になってしまうことが少しだけ怖か

った。

 ここまできてどこか怖気づいている自分

を時間を潰すことで隠そうとしている…そ

の自覚はあった。

 けれど恋人とも友達とも言いきれない今

の関係のまま変わっていくことが怖い。

 何かが変わってしまいそうで怖い。

 夏休みの間はオレのいうことを聞くと島

崎は約束したけどどう考えてもあの場しの

ぎの言葉だったし、なんでも言う事を聞い

てくれるわけでもないだろう。

 オレの要求が島崎の中で受け入れがたい

ものだった時、きっと島崎の気持ちは離れ

ていく。

 最初は僅かかもしれないそのズレが重な

ったらもうただの友達にすら戻れないんじ

ゃないか…そう考えたら今の場所から一歩

も動けない。

 だから島崎から欲望を向けられるのを避

けてゲームなんかで時間潰しをしている。

 触れたいと思わないわけじゃない。

 プレイの最中に時どき触れた肩の体温に

少しだけドキドキしたりもした。

 けれどその先にあるものが、今は怖い。


「ミツ、お待たせ」

「うん。さんきゅ」


 手渡されたコップを受け取り、麦茶で喉

を潤す。


「…まだ何かやる?」

「なに?疲れたの?」

「そういうんじゃないけど、さ…」


 ゲームソフトに触れているオレに窺う様

な声がかかる。

 顔を上げて島崎の顔を見れば何を言いた

いのかは分かる。

 けれどまだ太陽は高いままだし、牽制す

るように視線に力を込めると島崎は頬を掻

きながら引き下がった。

 まだ、大丈夫。

 夜になるまではこの調子で誤魔化せる。





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