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短編集・読み切り




 ぐちゅっ。


「ぁっ…!!?」


 不意に体が跳ねた。

 体の内側の粘膜を指先が撫でたという感

覚はあった。

 しかしそれは痛いとか擽ったいとかいう

感覚ではない。

 撫でられたと思った瞬間にはもう反射反

応の様に体が跳ねていた。

 同時に一瞬だけ指の束を締め付けてしま

ったのだが、何者かはそれを咎めるでもな

く確かめるように繰り返し同じように撫で

る。

 その度に体が律儀に反応してしまい、自

分の体の未だ知らなかった反射反応に困惑

し自分のペースを乱されていく。


「やめなさ、ぅっ、そこばかりっ…」

「へぇ…?センセ感じてる?

 ハハッ、素質あったんだ」


 まるで面白い物を見つけたような声で嘲

る。

 ますます執拗にその一点を擦ってくるそ

の指から逃れたくとも指は深くまで体を拡

げているし、急所である股間はぬるぬる滑

る掌に掴まれたままだ。


「ココで感じられるって個人差あるんだっ

 て。

 よかったね、センセ。

 ココが気持ちいいならセンセも気持ちよ

 くなれるよ」


 快楽とは違う。

 あくまでも体の反射反応に近いものだと

思う。

 ただ自分の体を制御できない一瞬を意図

的に繰り返されることが恐怖にも似たパニ

ックを生み出しつつあった。

 身体的には拘束されても、される行為は

予想の範囲内だろうと高をくくっている節

があった。

 しかし…。


「イヤ、だぁっ、ぁぁっ、抜いっ、ぅぁぁ

 …っ!」


 そこだけを狙って繰り返し擦られ続ける

とビクビクと震えていた体の反応が追いつ

かなくなって背が弓なりに反ったまま戻ら

なくなる。

 逃れることも許されないまま濡れた縁で

ギュウギュウと締め付けたが、懇願して首

を振り乱してもなお指の動きは止まる気配

もない。

 何かを考えられる余裕などあるはずもな

く、じわりと涙が僅かに浮かび思考を手放

しかけたその刹那ようやく指先は動きを止

めた。

 もう何かを喋る気力もなくぐったりと体

を投げ出すと、ようやく粘膜を蹂躙してい

た指先がゆっくりと体内から抜け落ちた。

 もうそれだけで残りわずかだった体力が

底をつく。

 動く気力も何かを考える気力もなく肩で

息をしながら、あぁ終わったのかと朧げに

思う。


「あぁ、センセのせいで汚れちゃった。

 そんなに気持ち良かった?」


 その声が響いた時にはもう濡れた指先を

呼吸を確保するために開いていた口内に突

っ込まれた。

 青臭いぬめりを舌の上で感じて嘔吐感が

せり上がってくるが入り込んだ指先は押し

出そうとする舌の動きを弄ぶように動いて

指先を擦り付けてくる。

 いっそ噛みついてしまいたかったけれど

も、拘束されいいように弄ばれている現状

でその選択は賢くないと擦り減らされた理

性が告げる。

 相手にするからいけないのだと舌の動き

を止めてしばらくされるがままにさせてい

たら、やがて飽きたのかようやく指先を抜

いた。





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あきゅろす。
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