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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 そんな事情もあって駅の近くの公園で待

ち合わせた。

 家まで迎えに来るとクロードは言ったけ

ど、兄貴や麗と鉢合わせしようものなら出

かけるどころではなくなってしまう。


 公園まで早足で歩くと、すでに不釣り合

いな黒く細長い車体が公園入口のところに

居座っていた。

 駆け足になって近づくと、その前にドア

が自動で開いた。

 中から出てきたクロードは俺の姿を確認

してニッと笑った。


「はよ。走らんでもよかったのに。

 やっぱ家まで迎えに行くんやったな。

 冷えたやろ?」


 答えようとした俺の頬を包み込んでくる

掌はことのほか優しくて視線が絡まるとド

キッと心臓が跳ねた。


「おはよう。

 そんな…ちょっとだから。

 大したことないし。

 えっと…まさかその車で行くの?」

「うん?そやけど?」


 目立つ外車で移動なのか…街中でないと

いいな、なんてこっそり思ったのは秘密

だ。


「車の中暖かいさかい、はよ乗ろ」


 クロードに促されるままに車に乗り込む

と、その柔らかいソファにゆっくりと腰を

沈めた。

 硬すぎず柔らかすぎず快適なソファは体

の形にフィットして非常に座り心地がい

い。

 しかし液晶テレビ、小さなシャンデリア

風の照明、果てまではバーカウンター、ワ

インクーラーまで完備しているこの車は日

本車に乗り慣れている俺にとっては少々落

ち着かない。

 まるで場違いのようで。

 すかさず隣に腰を下ろしてきたクロード

の温もりに少し安心して肩の力を抜くと、

自然に肩に腕が回ってきた。


「クロード、近い…」

「冷えたやろうからはよ温めんと風邪ひく

 やろ?」


 あまりに自然に肩を抱いてくるので抗議

の視線を向けるが、さも当たり前のように

言いきられてしまう。

 この暖房のきいた車内でくっつく必要な

んてどこにもないのに。




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あきゅろす。
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