[携帯モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 ドンッ!


 大地を震わせて一発目の大音響が響い

た。

 スマホから届く音声とほぼ同時にリアル

に耳に爆音が届いた。

 興味がないからすっかり忘れていたけ

ど、家からこの花火大会の花火は見られ

る。


『うわぁ…』


 スマホを握りしめたまま花火を見ている

のか感嘆の声がやたらリアルに聞こえてく

る。


「お前バカだろ」

『え?』

「どうせ一人で行ってんじゃないんだろ?

 電話で俺を引っ張り出そうとか無駄だか

 ら。

 そいつらと遊んどけよ」


 いつもクラスメイトに囲まれている彼の

ことだ、一人で夏祭りになど行かないだろ

う。

 なのに何故行きたくもない人間に構うの

か理解できない。

 自分にかまけている暇があるなら、今傍

に居る友達と喋ればいいと思う。


『うーん、それなんだけどさぁ…』


 スマホの向こうで言いにくそうな間があ

った後で、ついに本当の理由を白状した。


『連絡が上手くいってなくて、買いすぎち

 ゃったんだよね。

 焼きそばと焼モロコシ』

「……しょうもな」


 たったそれだけのことで、と怒りさえ通

り越して呆れた。

 育ちざかりの高校生だ。

 多少買いすぎたとしても男子が多ければ

食べきってしまうであろう。

 食べきれなかったとしても持って帰れば

いいだけだ。


「そんなもん自分たちで食うなり持って帰

 るなりしろよ」

『そうなんだけどさぁ…』


 煮え切らない態度に再びイライラしてく

るが、いちいち怒るのも馬鹿らしいと頭を

冷やした。

 夏祭りの出店の食べ物は基本的に高い。

 食べるにしても持ち帰りにしても、懐が

痛いのは変わらないというところだろう。


「どのくらい買いすぎたんだ?」

『えっと…13人前、かな?』

「バカだな。自腹切れ。それじゃ」


 どう間違えばそんな大人数になるのかは

甚だ疑問だが、とりあえず自分には関係な

いとボタンに指を伸ばす。

 数人分なら皆で分けて食べてしまえばと

りあえず荷物も懐もそこまで負担にならな

いが、これが二桁までいってしまうと一人

ぐらい援軍が増えたところでどうにもなら

ない。


『わーっ!待った待った!

 助けると思って頼むよ!』

「知らん。じゃ」

『半額!

 いや、いっそタダでもいいから!!』

「………」


 さすがにタダとまで言われると迷う。

 人ごみも熱気も大嫌いだけども、聞いて

いる間に体が菓子パン一つでは足りないと

空腹を訴えてくる。


「…食ったらすぐ帰るからな」

『おー!サンキュ!すっげー助かる!!』


 1トーン上がった声で礼を言われるのも

調子がいいなと思うが悪い気はしない。

 行くなら行くでシャワー浴びて着替えな

ければいけない。

 だがまぁ花火は打ち始めたばかりだし充

分間に合うだろう。


「貸し一つな」

『あはは。手厳しいな。

 じゃあ待ってるから』


 結局通話の終了ボタンを押したのは桐生

駆のほうだった。

 通話が切れてからそれに気づいて、そも

そもなんで怒っていたんだろうと思い直し

たらひどく自分が滑稽に思えた。

 そんな気持ちはシャワーで汚れと一緒に

洗い流そうと浴室に向かった。




             END





[*前]

[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!