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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 ピピピピピピ…


 部屋の沈黙を極めて機械的な電子音が破

った。

 有名アーティストの歌や曲を着信音にし

ている者が多いが、この青年はそういうも

のに一切興味がなかった。

 その一見味気ないようでいてストイック

な音に気づいてスマホに手を伸ばすとメー

ルを受信していた。

 それと同時に送り主の名前も知れた。

 『桐生 駆』

 高校のクラスメイトだ。

 慣れた手つきで画面を弄ってメールの文

面に目を通すと、どうやら夏祭りに一緒に

行かないかという誘いのメールだ。


「めんどくせ…」


 その唇からもれた声は酷く短かったが、

それも何日ぶりかというレベルなのは本人

ももういちいち自覚はしてないだろう。

 そもそもその短い一言を言い終わるより

先に指先が動いていて、不満を連ねた短い

メールを突き返す。

 パソコンに向かっている時間が何よりも

長いこの青年は無口なのも手伝って性格が

内向的だと思われがちだ。

 しかし無口なのは単に人の好き嫌いが激

しい、本音を言って面倒事になるのが嫌、

無関心が主な理由で、口を開けば辛辣な物

言いが本音として口を突いて出る。

 青年の無口さには慣れられても、この物

言いに我慢できる級友など奇跡に近く、ど

れだけのクラスメイトが彼の目の前から消

えたのか…いや、それすらも青年には興味

がない。

 そして知らず篩にかけられた人間関係の

中で残った内の1人が桐生駆だ。

 青年が終始こんな調子なので篩にかけら

れても残る人間関係というのは大概は知人

程度のいてもいなくても同じという距離感

であることが多い。

 青年自身がそもそもそういう距離感でい

るし、無理に踏み込んでくるような関係な

ど面倒になって早々に断ち切ってしまう。

 桐生駆という人間はそういう青年の交友

関係の中でも特殊な立ち位置にいた。

 決して押しつけがましくないのに、かと

いって忘れて離れていくこともない。

 いつも自分の不快にならない距離にいる

から、たまに気まぐれを起こして自分から

ちょっかいを出しに行ってしまう。

 虫の居所が悪ければそのままストレート

に言動に出してしまうけれど、それでも大

して傷ついた顔もしない。

 青年の人生の中ではとても稀有な人間関

係で、どこまでなら許すのか試してしまっ

ている一面もないとは言わない。

 それでも桐生駆は離れて行かないから不

思議に思いながらも今まで関係が続いてい

る。





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