悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*
この技術は諸刃の刃に近いものがある。
刃を持たなければ見知らぬ者からの攻撃
に対して無力なまま何もやり返せないが、
やり返しているところだけ見られればやは
り自分が加害者に見られるだろう。
そしていけないことだと分かってはいて
も自分に出来るとわかっていると試したく
なってしまう。
クラッカーの大部分はフラストレーショ
ンを溜めこんだ子供であるという見解があ
り、相手にダメージを与えて喜ぶ様を軽蔑
してスクリプトキディと呼ぶこともある。
しかしやってはいけないことをしてしま
うのは子供だけの習性ではないし、フラス
トレーションをためるのも子供だけではな
い。
“今日のハッカーは明日のクラッカー”
と言われる所以はそのあたりにあるのだろ
う。
【craze:“能力を買ってくれるのは有り難
いけど、そこまで万能じゃないよ。
何でも『切り裂ける』わけじゃない。
大事なのは自分の能力と程度を知ること
さ。
そう思わないかい?”
DD:“確かに君の言う事ももっともだ。
自分の能力を見誤ったピエロは落ちて床
に叩きつけられるしかないから”】
ハッカーとクラッカーは紙一重。
正気と狂気の境目がそうであるように。
自分の握り締めるナイフの刃が相手と自
分自身に向いていることを忘れると結果的
に身を滅ぼすしかない。
【mic:“DDが作ってたプログラムはどうな
ったんだい?”
DD:“あぁ、もう少しだよ。
華麗なレディたちが無粋な侵入者の身ぐ
るみを剥いでくれる日が待ち遠しい”】
クラッキング(悪意のあるハッキング)
なんて一生無縁ならばその方がいい。
しかし誰でも手を出せるモニターの向こ
うの世界は使い手が思うより闇が深い。
仮面をかぶった悪意の侵入者は排除しな
ければ。
しかしそれも一方では方便で、迎撃とい
う形で侵入者をボロボロにしてやろうとい
う一種の快楽かもしれない。
【mic:“ハハハ。
もし自分がクラッカーになったとしても
DDのパソコンだけはクラッキングしたく
ないね”
craze:“クラッキングなんてソフトクリ
ームが大好きな子供のすることさ。
micは愚かじゃないと思うけどね”
mic:“それを『Ripper』に言われるとは
思わなかったよ”
craze:“クラッキングなんてそんな大そ
れたことはしてないよ。
ただちょっと…そうだね玄関から庭先を
覗いてるだけさ”】
自分たちのいる場所の危うさを知ってい
るからこそ慎重になる。
弱い者ほど大きな声で吠えるが、能ある
鷹は爪を隠すものだ。
それはやはりどこの世界でも同じだろ
う。
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