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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode



「こっ…子供の頃からは、ダメだ。

 せ、せめてキスくらいで…」


 幼い時分に淫魔のクロードに押し倒され

てあれやこれやエッチな事を教え込まれる

のは教育上よろしくない、色々と。

 せめて手を繋ぐとか、ほっぺにチューく

らいならいいけど。


「へぇ?

 キスしてええんや?」

「…っ!」


 しかしにんまり笑うクロードの表情は崩

れず、顔を覗き込まれて耳まで一気に熱が

駆け上がった。


「だっ、ダメっ。やっぱナシ!」


 笑みを浮かべたクロードの唇が心なしか

近づいてきてる気がして慌てて取り消しな

がら体を離そうとクロードの肩を掴んだ。

 けれど既に腰にはクロードの腕が回され

ていて動けず、一度は逃れたクロードの指

がもう一度俺の顎に触れて上向かせようと

してくる。


「19歳の駆は?

 キスしたらあかんの?」


 顔を背けて逃れようとする俺の耳に唇が

触れそうな距離で囁いてくる。

 俺の心臓は内側から強く胸を叩いていて、

クロードの肩を掴む手に上手く力が入らな

い。


 べ、別に嫌じゃない。

 嫌じゃ、ないけど…なんか違う気がする。


 自分でも誰に言い訳してるんだか分から

ないけれど、今ここで流されちゃいけない

ような気がする。

 いけないというか、勿体ないっていうか

…。


 だって…ほら、今夜はまだ翻訳の答え合

わせがまだ、だし…。


 童話の話とか週末の予定を立てながらお

酒を楽しむクロードと一緒に晩御飯を食べ

て、シャワーを浴びて、ベッドに入ってか

らでも遅くはない…と思う。


「あ、後で。

 ご飯まだだし、シャワーも浴びたいし」

「後やったら駆を隅々まで味わせてくれる

 ん?」


 腰に回されていた掌が問いと共にTシャ

ツの中に潜り込んできて素肌を撫でる。

 その触り方が既にベットの中にいる時の

ようで俺の鼓動をますます煽るようだ。

 ここでYESの返事をしないければ抱き

締める腕を解いてもらえないのは明白で、

俺は顔を背けたまま無言で頷くのが精いっ

ぱいだった。


 ぺろっ


「っ…?!」


 クロードの掌がTシャツの中から出てい

きそのまま腕を解いてくれるだろうと体か

ら力が抜けた瞬間、首筋のラインを舌でな

ぞられて背中が震える。

 クロードに視線を戻すと、悪戯っぽい笑

みが俺を見ていた。


「シャワー浴びるまでお預けやから、味見」

「も、もう…」


 あくまでビックリしただけだという態度

でクロードの舌が触れたばかりの場所に掌

を押し当てる。


 …危なかった。

 キスとかされてたら、俺…。

 
 昨日も一昨日も、此方に来てからほぼ毎

晩クロードとは肌を合わせているというの

に。

 いや、だからこそ余計にどんなスキンシ

ップもそれに繋がりやすくなっているのか

もしれない。

 でもベッドの中でお腹が鳴るなんて雰囲

気ぶち壊しもいいところだし、外を出歩い

てないとはいえシャワーは浴びたい。


 そう思うのは間違ってない…と思う。


「俺、ご飯の準備するから」


 ようやく腕が解かれ動けるようになった

俺はクロードから離れながらキッチンへと

向かう。

 先程までの陰鬱とした空気はすっかり影

も形も無くしているのに気づいたのはその

後のことだった。





「今夜はアイルランド料理なんやな」

「うん。

 このシチューも美味しいよ。

 羊肉だって言ってたけど」


 表面カリカリの焼き立てパンに羊肉を使

ったシチュー、白身魚のフリッター、小ネ

ギを混ぜたマッシュポテトを添えたグリー

ンサラダ。

 毎日俺の昼食と夕食はクロードが手配し

ているレストランのシェフが腕によりをか

けて作ってくれた料理が届けられる。

 今夜のメニューはアイルランドの家庭料

理らしいけれど、メニューは毎日日替わり

で和食をメインにイギリスやアイルランド

の各地方の料理もよく食卓に並ぶ。

 どれも美味しくて、クロードと一緒に味

わえないのが少し勿体ないと思えてしまう

位だ。





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あきゅろす。
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