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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*



「うん、したい」


 程よい眠気が手伝ったのかあっけないく

らいスルリとそんな言葉が出てきたことに

俺の方が驚いた。

 それはクロードも同じだったようで、瞬

きを数回繰り返した。

 けれどあまりじっと見つめられるものだ

から居心地が悪くなって、それを誤魔化し

たくて寝返りをうって仰向けになる。


「その…嫌ならいいけど」


 クロードの直視に耐えられなくなって小

声で付け足すと、クロードが満面の笑みで

額に額をくっつけてきた。


「あかん。

 部屋に着くまでは我慢しようと思っとっ

 たけど気が変わった」


 まさに鼻先が触れる距離でクロードが目

を細める。

 その目の奥で揺らめいた熱に鼓動を高鳴

らせながら瞼を閉じて薄く唇を開いた。

 少し湿った唇に少しずつ角度を変えて繰

り返し下唇を吸われる。

 急速に鼓動が高まるのを感じながら此方

からも吸い返すと、間もなくヌルリと舌が

唇の隙間から入り込んできた。

 口内の粘膜を撫でる温かい感触に加えて

舌先に纏わりついていた唾液が触れる場所

全てに熱を与えていく。


「んっ、ふ、ぅ…っ」


 クロードの舌を舐めると舌を絡めとられ、

そのまま唾液ごと吸い上げられる。

 ズクンッと重い熱が腰に降り、鼓動のス

ピードを追い抜かんばかりの勢いでに下半

身に熱が集まっていく。

 触れられてもいない股間がズボンの布地

を切なく押し上げるのに時間はかからなか

った。

 久しぶりのクロードの唇や舌をもっとじ

っくり味わいたいのに、張りつめる股間の

熱が俺を急き立てた。


「クロー…んんっ」


 喋ろうとした俺の唇をまだ足りないとク

ロードの唇が塞いでくる。

 しかし羽毛布団の下では硬いジーンズを

押し上げるほど俺の股間は余裕を無くして

いて、早く下着を下ろしてしまわないと先

走りだけでおもらしでもしたように下着が

濡れてしまう。

 さすがにそんな姿で空港に降り立つわけ

にはいかないというのに、クロードは砂漠

でオアシスを見つけた遭難者のように俺の

口内から唾液を全て舐めとろうとする。


「んふっ、んんぅっ」


 互いの唾液で濡れる舌が擦り合い粘膜に

触れて混じってそのほとんどが重力に引か

れて俺の喉から体の奥まで染み込んでいく。

 俺だってもっとクロードとキスしていた

い。

 でも舌を絡めとられて吸い上げられると

股間は今にも先端から熱を噴き出しそうに

なってジーンズの上から痛い位の強さでギ

ュッと股間を掴んで高ぶる体の気を反らし

た。


「ダメっ、もう出るっ…!」


 右手で強く股間を押さえ、左手でクロー

ドの胸を押し上げながらようやく顔を引き

離して悲鳴のように口走る。

 右手を離せばすぐにでも放ってしまいそ

うで、クロードとの間にある薄い布団を左

手で体の上から避けた。

 一刻も早く下着をずり下したいけど、左

手だけではベルトを外すことができない。

 急き立てる快楽と焦りで泣きたいような

気分でクロードを見上げると、熱っぽい眼

差しで微笑みながら俺のベルトに長い指が

触れた。

 慣れた手つきで俺のベルトを外しながら

クロードが尋ねてくる。


「俺と会えへん間はちゃんと自分で抜いて

 るん?」


 クロードの手つきは素早いが丁寧で、俺

の右手をそっと股間から離して下着ごとズ

ボンをずらすと下着の中に手を入れてそっと

中の熱を握り込んでくる。


「っ、あんまり…」


 3カ月ぶりに直に触れられた指先に小さく

息を呑む。

 それだけで少し擦られただけで放ってしま

いそうな勢いを取り戻し、下着の中から取り

出されたそれは天を向きながら既に目を覆い

たくなるほど自ら零したもので濡れ光ってい

た。


「あんまり?

 俺と会うた時はこないに元気なんやから、

 ちゃんと抜いたらんと体に悪いで?

 フェロメニアは欲求不満になると匂いが

 濃くなるし、悪い虫が寄ってきやすくな

 んねん。

 それでなくても駆を日本に置いていくの

 心配やのに、俺がイングランドへ帰られ

 んくなる」

「だって…」


 寂しさや虚しさばかりが胸に押し寄せて

あんまり気持ちよくなれないから。

 頭ではそう思うけれど言葉にはならない。

 言うのは恥ずかしいし、クロードにそれ

を知られたら本当にイギリスへ連れていか

れたままに日本へ戻れなくなりそうな予感

もする。

 そして何より俺自身がまだよく分かって

いない。

 それがクロードがいない寂しさのせいな

のか、それとも純血の淫魔の体液に慣れて

しまったせいなのか。

 クロードのことは好きだし、一緒にいら

れたら楽しいと思う。

 けれどキス一つで体は勝手に反応してし

てしまうし、クロードのもたらす目もくら

むような快楽は思考の全てを押し流してし

まう。


「クロード、もう…」


 いつまでも触れてもらえない熱が切なく

震える。

 あの唾液たっぷりの口内に咥えられたら

下半身で燻る熱は1分ももたないだろう。

 けれどその瞬間を待ちわびている。

 自慰ではどう頑張っても得られない快感

を。

 唾液たっぷりの口内で果てて、その後で

どうなるか分かっていても。


「“もう”?」


 先走りを溢す俺の熱に指先を滑らせなが

ら俺の目をじっと見つめて続きを要求して

くる。

 それは決して押しつけがましい空気では

ないけれど、期待に満ちた目で待たれると

羞恥心を擽られた。


「吸って…」


 内心、羽毛布団を頭から被りたくなりな

がら消え入りそうな声を絞り出す。

 クロードに握られたそれの先端の穴がヒ

クンと震えてとろりと新たな蜜を溢した。


「ええよ」


 クロードは満面の笑みを浮かべて快諾し、

期待に張りつめる熱の先っぽから流れる蜜

をペロリと舌で舐めとった。



「んくッ」


 先端の小さな穴の縁でぬるりとした感触

を確かめる間もなく、天を突いていたそれ

から熱量が迸った。

 ビクンビクンと小刻みに震える腰から放た

れるそれは止める間もなくクロードの顔に降

りかかる。

 ドロリとした濃い白濁は粘ついていて、下

半身の冷めない熱より申し訳なさが先立つ。


「ご、ゴメン、クロードッ!」

「顔射されたん初めてや。

 あぁ、勿体ない」


 クロードは全然気にしていない素振りで

明るい笑い声を出すと、顔にかかってしま

ったそれを丁寧に指先で掬って口に運ぶ。


「あっまいなぁ、相変わらず」

「っ〜〜!」


 自分が放ってしまったものをそんなふう

に目を細めて味わわれると身の置き所がな

い。

 “フェロメニアの体液は淫魔にとっては

至高の甘美”。

 そう教えられてはいても、吸ってくれな

んて自分から頼んでおきながら咥えられも

しない間にその顔にかけてしまうなんて。

 ティッシュペーパーか何かで顔にかけて

しまったものを拭ってしまいたいけれど、

これが淫魔であるクロードにとって3カ月

ぶりのまともな食事なんだと思うとそれも

憚られる。

 羞恥と申し訳なさが絶え間なく心をチク

チクと刺した。





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