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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 その妙な日本語で肩をすくめる主…クロ

ードに、黒髪の青年は眉をひそめた。


「(クロード様…。

 そのような下賤な言葉遣いをされてはク

 ロード様の品位が落ちます)」


 クロードは窓枠に肘をのせ、足を組んだ

まま校舎から黒髪の従者へと視線を移す。

 口元は笑っているのに、目は1ミリも笑

ってない。


「カイル…お前は、俺の、なんや?」


 わざと区切られた言葉は、それに相応し

い威圧感をもって黒髪の…カイルと呼ばれ

た青年に向かう。

 父親譲りの威圧感にカイルがハッと息を

呑み、深く頭を垂れた。


「(申し訳ありません。

 出過ぎたことを申し上げました)」

「分かればええんや、分かれば」


 人懐こい笑顔がクロードの顔に貼り付い

ている。

 しかしクロードの親譲りの非情さを身を

以て知っているカイルにはとても笑える状

況ではない。


 背中に嫌な汗をかくカイルに興味を失っ

たようにクロードの視線はもう一人の従者

に向かった。


「ティム、ホテルはもうとってあるんやろ

 うな?」


「(はい。スウィートを1か月ほど。

 クロード様のお部屋に比べましたら狭い

 ですが、通学可能な距離ということでし

 たので、その中から一番の部屋をおさえ

 ました)」


 事務的な口調でブロンドの髪をもつ青年

ティムは答えると、手元のファイルをクロ

ードに差し出した。

 クロードはそれを受け取り、写真付きの

調査書をペラペラと捲った。

 並んだ文字列から一つの単語を見つけ出

してその手がピタッと止まる。

 そしてその文字を指先でそっと撫でた。


「(フェロメニア…)」


 無意識でその唇が呟く。

 まるで大切な物の名前のように。





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あきゅろす。
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