悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*
5月の大型連休を終え、街が日常の休日
を迎えている頃。
一台の黒いリムジンが人気のない高校の
前の道路に滑り込むように停車した。
「(到着しました。
こちらです、クロード様)」
英語を聞きなれていない日本人が聞いた
なら英語に聞こえるだろう。
しかし英語が堪能な者が聞いたなら、英
語ではない異国語に聞こえる言語で口数の
少ない青年は主である隣に座っている茶髪
の青年に語りかける。
「ふーん?」
明るいブラウンの髪は短髪だが、前髪が
顔半分を隠すほど長い。
その前髪の間からグレーの目が覗き、ス
モークがかかったリムジンの窓をボタン一
つで下げて退屈そうに溜息をついた。
「しょっぼいなぁー。
こんな学校よう通えるわー。
東の小国まで逃げてきて、それでこない
な生活やなんて…俺なら願い下げやわ」
髪や目、肌の色だけでなく顔の彫りも英
国ならではの深さでおよそ日本人には見え
ない。
しかし、その口から発されたのは言葉遣
いやイントネーションからしてどこの地方
ともとれないが、明らかに日本語だ。
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