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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 強い日差しが照りつける夏の島。

 透き通った波が打ち寄せる砂浜では砂に

足をとられて上手くいつものようには踊れ

ない。

 ただでさえ肌をジリジリと焼く太陽に体

力を削られるというのに、練習と合わせる

とこの場所で踊り続けてそろそろ2時間を

越えようとしていた。

 カメラのレンズを意識しながら俯き加減

で左足を後方に下げ、そのまま体を反転…

させようとしてバランスを崩した。


「わっ」

「…ぁぶなっ。大丈夫か?」


 視界がブレると感じるより先に倒れ込み

そうになった体を力強い腕が横から伸びて

きて支えてくれる。

 健康的に焼けたその腕の持ち主の声が降

ってきて、俺は体を支えられながら顔を上

げた。


「うん。サンキュ、クロード」


 砂浜で倒れたりしたら衣装が砂だらけに

なってしまう。

 それが避けられて良かった。

 ほっと息をついたところでカメラの向こ

う側から声が響く。


「カーット!」

「やれやれ…また撮り直しですか」


 クロードとは反対側で踊っていた兄貴が

大きく溜息をついて肩を落とす。

 もう何度目だと俺を見下ろす視線が責め

てくるけど、別に好きでテイクを重ねてい

るわけではない。

 そりゃつき合わせて悪いとは思うけど。


「ごめん…」

「気にせんでええて。スタミナがもつよう

 な体力づくりしてへんのが悪いんやから」


 謝る俺の腰に腕を回して俺を立ち上がら

せてくれたクロードは嫌味ひとつない笑顔

を俺に向けながら、顔も見ない兄貴に喧嘩

を売ってくれる。

 背中の向こうで腕組みした兄貴の空気が

音をたてて凍った…ような気がするから怖

くて振りむけない。


「はーい!僕、喉渇いちゃったー!」


 その空気を打ち消すように麗が両手を上

げてアピールする。

 カメラの向こう側にいるスタッフ達がど

うしようかと相談している間に麗が俺に歩

み寄ってくる。


「僕、マンゴージュースが飲みたいな。

 お兄ちゃんは何を飲む?」


 俺を見上げながら腕を絡ませてきた麗は、

未だにちゃっかり俺の腰に腕を回したまま

のクロードから離れたいように腕を引いて

くる。


「そうだな…俺は…。

 あ、カイルは何飲む?」


 暑さも手伝って何を飲もうかと鈍い思考

が動き出したところで後方を振り返る。

 もうすっかり休憩モードに入りかけてい

るらしいカイルは相変わらずの仏頂面で白

いシャツの上に着ているベストのボタンを

外している。

 マイペースなのは相変わらずのようで、

“話しかけてくるな”と一瞬だけこちらを

見た視線で告げてきた。





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