[携帯モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「皆さん、ジュースは手元にいきましたわ

 ね?

 それじゃ、新聞部のますますの活躍と発

 展を祈りまして」

「「「かんぱーいっ!」」」


 満開の桜の下、大倉部長の掛け声に合わ

せて皆それぞれにコップを掲げる。

 乾杯と重なり合った声の後に続くように

傍にいた者達と紙コップの淵をあてて笑い

合う。


「加我、高瀬、今年もよろしく」

「あぁ」

「こちらこそ」


 すぐ横にいた二人とコップを触れ合わせ

る。

 学生だしもちろんアルコール類なんてな

いけど、皆と桜の樹の下で食事をすること

なんてないから俺は今日を楽しみにしてい

た。


 俺達が入学して新聞部に入部した1年の

時、当時の部長と副部長をしていた大倉先

輩と片岡先輩は3年。

 毎年春休みに開かれているという新聞部

の花見は、新入生が入学してくる前に新2

年生と新3年生で桜を愛でながら親睦を深

めましょうという趣旨のパーティらしい。

 だから本来、2年に進級した俺達とそれ

ぞれの学校に進学した大倉・片岡先輩が一

緒に花見パーティに参加することはないは

ずだった。

 それが何故こうして一緒にいられている

かというと、本来このパーティを幹事をす

るはずだった新部長が急用で参加できなく

なったから。

 もともと中華料理店を経営している片岡

先輩のご両親が新聞部の花見の為にと料理

を用意してくれたこともあり、今年の花見

はたくさんの料理がシートの上に所狭しと

並べられていた。

 そうなれば当然片岡先輩は花見に出席す

るわけで、卒業前まで新聞部の部長を務め

ていた大倉先輩が新部長の代わりに花見パ

ーティを取り仕切るのにも異議を唱える者

はいなかった。


「駆、乾杯は?

 俺と乾杯せーへんつもりやないやろな?」

「わっ、こぼれるっ」


 乾杯の流れでそのまま二人と談笑しよう

としたら背中からガシッとクロードに抱き

着かれてあやうくコップの中身をシートの

上にぶちまけてしまいそうになる。

 危ない、危ない。


「そんなわけ…ないだろ?

 もう、危ないことはやめろって」


 そりゃ…ちょっとは思ったけど。

 クロードのスキンシップは人前でも遠慮

がなくなってきており、花見に来てまでベ

タベタ触ってくるのを全て振り切る自信は

ない。

 そもそも今日の花見で並んでいる料理の

一部は母さんが作ってくれたものもあり、

その関係で新聞部員ではないけれども元生

徒会長だった兄貴と麗まで新聞部の花見に

参加していた。

 今だって兄貴はちょっと離れた所にある

桜の幹に背中を預けたまま難しそうな本を

読んでいるけれども、その周囲の空気だけ

切り取られたように温度を下げていってい

る…気さえする。

 親睦を深めるはずの席で兄貴とクロード

が険悪なムードになるのだけは勘弁してほ

しい。


「お兄ちゃん、スコーン持ってきたよ。

 一緒に食べよ?」


 母さんが持たせてくれたイギリスの洋菓

子は清水や牧村といった女子部員に人気が

高く、まだまだ少年の面影の強い麗は金髪

のお人形さんみたいだとさっきまで先輩や

同級生に囲まれていた。

 その麗がこちらに来たということは皆満

足して解放したのだろうか。





[*前][次#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!