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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 今年の冬は例年に比べて華やかな気がす

る。

 電車に揺られながら眺める景色はいつも

と違うけれど、クリスマス色に染まる街の

景色は見ているだけでなんだか心躍るもの

があった。


 直前の土日休み、そして23日の天皇誕

生日。

 24日は半日だけの終業式を終えて、2

5日から正月が明けるまでは冬休みだ。

 冬休みは毎年家族で海外で過ごすのだと

いうクラスメイトの中には金曜の夜に出国

して終業式を欠席をした生徒もいた。

 まぁ多くの生徒にとっては学校や塾での

冬期講習があるし、課題が多いのも進学校

ならではだし冬休みなんて関係ないってい

う生徒だっている。


 俺はどうかというと、金曜日の夜から課

題を持ってこいと呼び出しを受け、3連休

はその消化で潰れた。

 今も終業式を終えて一度家へ戻り、足り

なかった着替えやら日用品を大きめのバッ

グに詰めて兄貴が一人暮らししているマン

ションに向かっている最中だ。


 大学へ行っても高校生の家庭教師のバイ

トをしている兄貴はまだまだ受験勉強に関

しても現役だ。

 その兄貴が勉強をみてくれるおかげで塾

に通う必要もないのだが、机にしがみつい

てでも上位大学に入学したいと思っている

わけではない俺に兄貴のスパルタ教育は本

当に必要なんだろうかとも思う。

 いや、一緒にいられる時間が長いのはい

いことだとは思うけれども。

 兄貴は大学へ入学してもまだ勉強中心の

生活をしていて、大学の講義やサークル、

アルバイトはもちろん課題だってそこそこ

出ているだろうにそれに加えて資格の勉強

まで始めているようだ。

 いくら大学も冬休みに入っているとはい

え、代わりに家庭教師のアルバイトは年末

前に立て混んでいるらしく忙しそうなのは

ちっとも変わらない。

 冬休みと言っても俺だって高校の冬期講

習があるし、兄貴の部屋に転がり込んでも

冬休みの課題と受験勉強で消費されていく

だけの冬休みなんて嫌すぎる。

 傍にいるなら触れたいと思う。

 ただ純粋に体温とか匂いとか感じたい。

 でもそれを実際にすると“欲求不満なん

ですか?”と押し倒されてしまうから、そ

ういう意味では欲求不満かもしれない。

 世間一般的には“穴があったら入れたい

お年頃”という奴なのかもしれないけど、

生憎と言うか…そういうのはもう間に合っ

ているから。


「はぁ…」


 3連休を利用して兄貴のスパルタ教育の

元、冬休みの課題はあらかた片付けられた。

 あとは兄貴のバイトのスケジュールと資

格試験の為の勉強時間、俺の受験勉強にど

れだけ時間を割くかでそれ以外に費やせる

時間の長さが決まる。

 …別に超難関大学に行きたいわけじゃな

いから受験勉強なんてまだいい、なんて言

ったらきっと兄貴は目の色を変えて怒るだ

ろう。

 だけどそれに時間を費やしていたら、必

然的にくっついていられる時間だって減る

わけで。


 欲求不満。


 頭の中でジレンマを抱えながらジタバタ

しつつも、体は電車に揺られながら手すり

の傍によりかかって暫く開く予定のないド

アの窓から景色を眺めている。





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