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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「えっと…人身御供って何の話?

 供え物は腹減ったから確かに食っちゃっ

 たけど…」

「いいですよ、そんなもの。

 この体が供物ですから」


 ニッコリ笑ってとんでもないことを言わ

れた。

 冷や汗が浮かんだのは間違っていないと

思う。


「あ…あのさ、俺は供物じゃないから。

 確かにくる途中で腹減って供え物食っち

 ゃったのは謝るけど、だからって自分自

 身を供物になんて思ってたわけじゃ…」


 言いながら後退しようとしたらすぐ後ろ

が壁だった。

 人間だったら日常生活に支障をきたす長

さの爪がそんな俺の頬を撫でる。


「僕の寝所に断りもなく自ら入ってきたん

 です。

 そもそも拒否権なんてないんですよ?」

「そっ、それはっ…」


 入れって言われたから…!


 しかし声にならない。

 いくら言おうとしても声として音になら

ない。


「もし万が一拒否したら…洪水を起こして

 村ごと押し流してしまいましょう。

 僕を怒らせるのは得策ではない。

 解りますね?」


 爽やかに笑いながらとんでもないことを

言われた。

 仮にも神様が、そんなことしていいの

かっ!?


「神と言うものは2種類います。

 祈れば人間に恩恵をもたらす神。

 祈らないと人間に厄災をもたらす神。

 僕は基本的に前者ですが、それでも礼儀

 を知らない連中の願いまで叶えてやるほ

 ど酔狂ではない」


 まるで心を見透かしたような言葉にドキ

ッとした。

 そんな俺の顎を龍神の爪がなぞる。

 鼻先があと少しで触れるほど顔が近づい

てきて、その唇の下に鋭い犬歯も見えた。





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あきゅろす。
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