[携帯モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「出せる答えなら、出してほしいですわ。

 その答えがどんなものでも、この気持ち

 に区切りをつけることができますもの」


 視線をそらして小声で漏らしたけれど、

返ってきた声に迷いはなかった。

 その言葉の裏に今までの苦悩が見えるよ

うで、それ以上は何も言えなかった。

 そっと視線を戻すと莉華の目と目が合っ

た。

 静かな表情がふっと笑って、そして近づ

いてきた。


 …ちゅっ


 怖いように目を閉じて受け入れた唇は柔

らかくて温かかった。

 投げ出していた右手に指が絡んできてそ

のまま握られる。

 絡めた指は同じようにしっとりとしてい

て、そして微かに震えていた。

 莉華も緊張しているんだ…それを知った

ら何となく胸の中の恐怖心が遠のいたよう

な気がした。 


「はぁ…」


 角度を変えて何度も降ってくる優しいキ

スに緊張していた体が解れていく。

 今までの莉華との距離を失いたくないと

いう思いもあった。

 答えを出してしまった後でどうなるかと

いう不安もあった。

 けれど莉華の唇はどうしてこんなに優し

くて心地いいのだろう。

 何度目かで触れた唇をやんわり吸って返

すと、ピクッと莉華が震えた。


「…莉華も怖いの?」

「怖い、ですわ。

 怖くないわけないじゃありませんの」


 私を見下ろす莉華の目には不安が揺れて

いる。

 いつもの明るく私を振り回す莉華の調子

ではない。

 けれども、だからこそ私を安心させてく

れる何かがあった。


「本当に不思議なんだけど、莉華のキス嫌

 いじゃないよ」

「…そういう言い回しは意地悪ですわ」

「いつも振り回されてるから、お返し」


 ふふっと笑ったらまた唇が降ってきた。

 けれど、繋いでいる莉華の手はもう震え

てはいなかった。

 静かな夜の中で互いの唇を啄む音だけが

響く。

 飽くことなく繰り返して、やがてどちら

ともなくやめた。

 なんだか今まで知らなかったもので心が

温められたような心地で。


「ねぇ、恵。

 白状してもいいですの?」

「白状って、えっ…?」


 莉華を失う覚悟で踏み出したと言うのに

今更なんなんだろうと驚いていたが、莉華

は珍しく言いにくそうに小声でそれを明か

した。





[*前][次#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!