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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 もう確認してしまった今となっては、聞

かなかったことにも誤解しているフリもで

きずに言葉を失った。

 莉華が何を考えて今その気持ちを明かし

たのか、私自身がどうしたいのかまで頭が

追いつかない。

 だからとにかく、長く伸びる間に耐えか

ねて沈黙を破ることにした。


「莉華はどうしたいの?

 キス、したいの?」

「したくないわけないですわ」


 部室でふざけた時とかキスプリを撮る時

とは明らかに違うさっきのキスをもうただ

の悪戯にするつもりもないのだろう。

 莉華はこちらの反応を伺いながらも迷う

ことなく言い切った。

 もうそれだけで頭痛がしてきたし、それ

以上を聞くのは怖い気はした。

 けれど毎年の製本を手伝わされてきた身

としてはもう一つ、どうしても確認しなけ

ればならないことがあった。


「じゃ、じゃあ…あの本に書いてあるよう

 なことも、し…したいの?」


 おそるおそる指でさっき莉華が整理して

いた紙の山を指さす。

 内容はもちろん男性二人がイチャイチャ

しちゃう話だけれど、直接的な言葉を使わ

ずとも言いたいことは伝わるはずだ。


「…恵が受け入れてくれるなら」


 さすがにこの返答には迷ったようだった

けれども、チラリとこちらの顔色を窺って

から答えたそこ声はしっかりと肯定を紡い

だ。


「むっ、無理無理無理無理っ!

 そ、そんなのっ、無理だって!

 だって、あれ!あれだよ!?

 あんなところに、あんなモノ入れちゃう

 とか無理でしょ!?」

「え…?」


 思わず抗議している間に興奮して声がひ

っくり返ってしまったけれど、当の莉華に

驚いた目で見られた。


「そっち“も”いいんですの…?」


 “も”ってなに。“も”って!?


 まさか自分から自爆したんじゃ…と気づ

いたのは、不安げに揺れていた莉華の顔に

うっすら赤みがさしたからだ。


「えっ、あれ?ちょっと待って。

 莉華、何のこと言ってたの…?」

「恵こそ、何の話してましたの?」


 確認しようとしてむしろ質問で返されて

しまった。

 ぐっと言葉に詰まる私の顔に熱が駆け上

がってくる。

 何も言い出せない沈黙がキリキリと胸を

締め上げる。

 居たたまれなくなって逃げ出そうとした

けれど、座ったままの私に後ろからしがみ

つく体勢でいた莉華は離してくれなかった。


「もう帰るっ。私、帰るから離してっ」

「もう夜中ですわよ。

 帰すわけないじゃありませんの」





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