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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 どうすれば莉華の手を止められるのかわ

からない。

 莉華が何を考えているのか、莉華ならど

う動くのか。

 従姉妹として幼馴染として誰より莉華を

知っているはずだったのに、その自信が目

の前で揺らいで崩れ落ちていく。


 こんな莉華は知らない。

 私の知っている莉華はこんなことしない。


 行為が悪戯の範疇を超えてしまうならば

この行為は何と呼べばいいのか。

 考えたくない。

 考えたらいけない。

 でもどうしても止められない莉華の手が

まるで知らない人間のもののようで、混乱

とある種の恐怖がない交ぜになって今まで

莉華に対して抱いたことのない感情が芽生

えつつあった。


「いいですわよね、恵は。

 こんなに胸が大きくて、いつでも揉み放

 題なんですもの」


 そう言いながらようやく莉華の手が止ま

った。

 掌は相変わらず胸に吸い付いたままだけ

ど、揉んだり摘んだりしなくなっただけ随

分とマシだ。

 気づきかけた感情を拒否する思考がそれ

に気づくまいと目を背ける。

 悪戯で済ませられるなら悪戯ですませよ

うと耳の奥の鼓動も急速に落ち着いていっ

た。


「わざわざ自分の胸を好き好んで揉みまわ

 す人なんていないから…」


 ようやく掴めた莉華の手を胸から引き離

すと驚くほどにあっさりと莉華の手が胸か

ら離れた。


「まぁ、じゃあ私が揉みますわ。

 これじゃ宝の持ち腐れじゃありませんの」

「もう冗談ばっかり…」


 自分で揉まないからといってどうして莉

華に揉ませないといけないの。

 莉華の冗談には時々ついてきけなくなる。


「もう髪洗い流す時間でしょ?

 私も体洗えないから」


 まだもの足りなさそうに唇を尖らせる莉

華から体を離して、ようやく自分の体を洗

う作業に戻れた。






 ちょっと見過ごせない悪戯はあったもの

のゆったりとお湯に浸かって浴室を出る頃

にはすっかりいつもの調子を取り戻してい

た。

 置かせてもらっているパジャマに着替え

て、いつも通り莉華の部屋に戻る。

 莉華の髪は長くて乾かすのに時間がかか

るからと先にドライヤーを使わせてもらっ

ていたら、背後で莉華がゴソゴソと動いて

いる。


「…あれ?

 製本の続きは?」


 莉華が整理しているのがコピーの本の山

だと気づいて思わずドライヤーを使ってい

る手を止めてしまった。

 クリスマスと言えど例年コピー本作りは

徹夜でしてきたから、夜更かしもしないま

ま眠るために部屋を片付けている莉華の考

えが理解できない。





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