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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「飼うの?」


 とっさに声が出た。

 人がいると思っていなかったのか驚いた

ように女子生徒はこちらを振り返った。

 知っている顔だ。

 確か同じクラスの秋月 沙耶(あきづき

さや)。

 成績で贔屓する大嫌いな化学教師のお気

に入り。

 返事まで間があった。


「うち…マンションで飼えないから…」


 消え入りそうな弱々しい声。

 でもそれが神経を逆撫でした。


「飼いもしないのに餌なんかやんなよっ!

 人間の匂いがついたら母猫が育児放棄す

 るだろっ」


 イライラした。

 どうしてもムカついて黙っていられなか

った。


「保健所に保護されたら子犬だろうが子猫

 だろうが殺処分されるんだぞ!

 アンタがやってんのは、最低な偽善行為

 だ!」


 彼女が優等生だからじゃない。

 先生のお気に入りだからじゃない。


 つい最近テレビで保健所に引き取られた

犬猫のその後という特集が組まれていたの

を偶然観てしまった。

 無情で無責任な飼い主に捨てられて檻の

中に入れられるペット達。

 中で柵が動き、檻の中を移動させられて

いって最後に辿り着くのはガス室。

 ガスを吸わされ恐怖と絶望の中で逃げる

こともできずに死んでいく命。

 数年前に老衰で亡くなった愛猫を思い出

して涙が止まらなかった。


 ペットを捨てる人間も、野良猫を飼う気

もないくせに餌をやる人間も大嫌いだ。





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あきゅろす。
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