悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*
不幸中の幸いだったのは、その教師の部
屋が中学生の足ならば帰りつける距離にあ
ったことだ。
日はすっかり落ちてしまったが、辿り着
いた。
家の明りを見て、ようやく緊張が緩ん
だ。
もう何も考えたくなかった。
体を綺麗に洗って、ベッドにくるまっ
て、今日起きたことなど忘れてしまいた
かった。
そっと玄関のドアを開いたらちょうど
階段を上ろうとしていた駆が見えた。
何も知らずに、いつものように近づい
てくる駆。
その無邪気な顔に胸を突かれた。
自分は理不尽に汚されてしまったんだ
とぼんやり思った。
だから、伸びてきた駆の手をよけた。
「近づかないで!
駆まで汚れますから…」
あの女の匂いが染みついているかもしれ
ない。
あの女が触れ、舐めた場所なんか自分で
だって素手では触りたくない。
傷ついたのだろう。
ショックを受けて動けずにいる駆を残し
て部屋へ駆け上がった。
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