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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*



「俺も明日早起きしてみようかなぁ…」


 結構真面目に考え込んでいたら、昨日の

ゲームセンターに通りかかった。

 何気なく店内に視線を巡らせると、昨日

遊んだゲーム台に西門の姿が見える。


「あ、今日はやってるんだ」

「うん?どうした?」

「ほら、西門があそこに」


 俺の呟きを聞いてゲームセンターに視線

を移した高瀬は俺の指さした方向を見て

「あぁ…」と納得したように視線を戻す。


「西門は以前にも見かけたことがあるよ。

 なんだかものすごい勢いでボタンを押し

 てたような気がするけど」


 なるほど。

 高瀬にも目撃されたことがあるらしい。

 なんだかすでにプレイ中のようだったの

でこっそり後ろに回り込んで見てみたら、

ハードモードの得点画面でほぼパーフェク

トの高得点を叩きだしていた。

 小銭を追加してEXモードを選択した西

門は、迷うことなく難易度を示す星マーク

が馬鹿みたいに並んだ曲をセレクトする。


 ちょっ、ちょっと待て。

 今のEXモード、だったよな…?


 見間違いかと目を擦っている間に西門は

軽く腕まくりをしてボタンの上に手を乗せ

る。

 メロディが流れ始めたら、もうそこから

が嵐だった。

 様々なボタンが連続で入り乱れる譜面は

リズムに合わせて理解するより早く吸い込

まれて消えていく。

 それなのに水の中を泳ぐ魚のように西門

の手がボタンの上を動き、譜面にボタンの

マークがちょうど重なる所で叩き込む。

 譜面そのものがすでに“歌”を凌駕する

数のボタン数を指示していて、それについ

ていく西門のプレイはすでに人間業とは思

えない。


「チッ…!」


 突然響いた鋭い舌打ちに何事だと思った

らずっと続いていたコンボが切れたよう

だ。

 それでも西門の手は止まらない。

 すでに反射行動のように無茶苦茶な羅列

の譜面をなぞり続ける。

 その集中力は凄まじく、その背中はとて

も声をかけられないオーラを背負ってい

る。


「カッコイイ…!!」

「ちょっとアレ、ヤバくねっ!?」


 ふと見ると昨日ゲーム台に群がっていた

小学生達も西門のプレイに釘付けになって

いた。

 でもその気持ちは分かる。

 あんなスピードのリズムゲームを目の前

で正確にプレイされたらポカンと眺めてし

まう。


「あれ、ゲーム台が壊れそうだな」


 …ゲームをプレイしたことのない人間に

はちょっと理解できないのかもしれないけ

ど。


 加我の冷静な一言にちょっと頭が現実に

戻ってくる。

 それでも西門のプレイはすごかったけれ

ども。





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あきゅろす。
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