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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「うーん、今回の化学の範囲広いなー」

「沢本先生は目を離すと教科書2ページくら

 い内容飛んでることあるくらいだから仕

 方ないだろう」


 学校の帰り道、今日発表になった化学の

テスト範囲を思い出して重い溜息をつい

た。

 隣を歩く誠一郎も仕方ないとは言うもの

の顔色は晴れない。

 化学の実験はそれなりに楽しいんだけ

ど、小難しい化学方程式を丸暗記しなけ

ればならないのが苦手だ。

 化学担当は沢本という女教師なんだけ

ど、女神やマドンナと呼ばれて男子に人気

の保健室の森丘先生や英語の紅野先生とは

一線を画している。

 若くて小奇麗な先生なんだけど、とにか

く笑わない。

 プライベートなことなんて一切話さない

代わりに教科書に書かれていない難しい化

学の話を始めたと思ったらチャイムが鳴る

まで喋り続けたりする。

 だからと言って厳しい先生かと言ったら

そうではなく、西門を筆頭に授業中の寝て

いる生徒や授業の邪魔にならない私語は基

本的にスルーだ。

 しかし鉄面皮とまで言われてしまう沢本

先生は、実はサイボーグだとか実はマッド

で公にできない研究をしてるとか…小学生

が考えそうな噂が生徒の間には蔓延してい

る。

 それというのも、ただでさえ難しい化学

をさらに難しい専門用語で説明したり、コ

ラム的な話を授業の最後まで一方的に喋り

続けたり、だから教科書の内容は駆け足で

終わらせて結果としてテスト範囲が膨大に

なったりと、生徒からしたら決して優しい

先生じゃないからだと思う。

 ただでさえ覚えにくい物をさらに難しく

されてストレスの持って行き場がないのが

根も葉もない噂話に変わるのだ。

 俺自身も沢木先生に対してはどうとも思

っていないけど、それでもテスト範囲で頭

を抱えているし。


「だから俺が教えたるゆうてるやろ?

 何も心配ないやろ」


 溜息をついた俺の肩を引き寄せたのはか

さばるテスト範囲が発表になっても顔色一

つ変えなかったクロードだ。


「…いい。化学は基本的に暗記教科だし」


 当たり前みたいな顔で俺の肩を抱いてき

たクロードの手を笑顔でひっぺがす。

 毎日毎日なんでこうも懲りずにベタベタ

触ってくるんだろう。

 まぁ俺がどんなに嫌な顔をしてもスルー

なクロードには何を言っても無駄だろうけ

ど。





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あきゅろす。
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