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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 それぞれ借りた本や本をコピーしたもの

を手に集まった時、時計の針は結構いい時

間になっていた。

 しかし図書館の利用者の数は減る様子も

なく、これからどうしようかと頭を悩ませ

ていたところで加我が思いがけず口を開い

た。

 「ウチで良ければ来るか?」と。

 いきなりこんな人数で押しかけても大丈

夫なのかと尋ねたけれど、両親は共働きな

ので問題ないと言う。

 道場はただ父親が趣味で続けているだけ

だから昼間は普通に働きに出ているし、家

にいるわけではないとも。

 図書館は混んでいるし、場所を提供して

もらうのは有り難いと加我の申し出に甘え

ることにした。

 もう昼になっていたのでコンビニでそれ

ぞれ昼食やおやつなんかを買い込んで向か

った加我宅は、古いだけだという加我の言

葉に反して立派な門構えの屋敷だった。

 映画にでも出てきそうな家だなと思って

入るのを躊躇している俺の横を加我が涼し

い顔して入っていく。

 …いやまぁ、加我にしてみたら自宅だか

ら当たり前なんだろうけど。


「おぉ!これが有名なザシキやな!

 加我の家はブシのスミカだったんや!」


 どうもクロードは何かを間違って記憶し

ているらしいけど、俺自身も詳しく突っ込

まれると答えられる自信はなかったので黙

っていたら高瀬が口を開いた。


「クロード、座敷は多分日本式のリビング

 という認識で間違いないよ。

 家屋をさす言葉じゃない。

 それから日本には武士もう存在しない

 よ。

 イギリスだと…そうだな…ヴィクトリア

 女王が即位中に、武士を含めた身分制度

 は大政奉還、明治維新で廃止されてい

 るから」

「Queen Victoria!!

 まさかこんなところで女王の名前を聞く

 とは思わんかった。

 そうかぁ、あんな時代にもう武士はニホ

 ンから消えたんやなぁ…」


 高瀬の口からスラスラと世界史が出たこ

とにも驚いたけど、それ以上に一瞬だけと

てつもなく流暢な英語がクロードの口から

興奮気味に飛び出したことで滅茶苦茶な方

言の日本語が余計にちぐはぐな印象を与え

た。

 クロードの口から流暢な英語が飛び出さ

ないとたまに本気でクロードの国籍を忘れ

そうになる…なんて本人には言えないけれ

ども。


「よくそんなことまでわかるなぁ…」


 感嘆の声で呟くと高瀬はなんでもないよ

うに笑って首を横に振った。


「あぁ、世界史って日本史と絡めて覚える

 と覚えやすいんだよ。

 大政奉還の年にノーベルがダイナマイト

 を発明した、とかね」


 高瀬の記憶力は教科書並みなんだろうか

と思わずまじまじと見つめてしまった。

 いつも爽やか笑顔で女子に騒がれてるな

ーと思ってはいたけど、それだけのものを

内にも外にももっているからなのかもしれ

ない。

 今度二人で遊んでみようか、と思ったと

ころで先を歩いていた加我が玄関のドアを

開けた。





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あきゅろす。
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