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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「世辞なんて言ってどうするんですか。

 それとも、そんなに自信のないものを僕

 に食べさせたんですか?」

「そうじゃ、ないけど…」


 味見だってしたし、苦いけど美味しいの

は分ってる。

 でも美味しいなら美味しそうな顔をして

ほしいと思うのは望みすぎなんだろうか。

 と、思っていたら兄貴に摘まれた2つ目

のチョコレートが俺の唇に押し付けられ

た。


「んっ?」

「不安なら食べてみればいいでしょう。

 美味しいから」


 “味見ならちゃんとした”と言おうと口

を開いた隙に押し込まれた。

 チョコレートのコクのある苦みが舌の上

でゆるゆると融けていく。

 わざわざ食べさせなくても味見くらいし

てるのに、と不満を視線で示すと唇を塞が

れた。


「んんっ…」


 すぐに割って入ってきた舌が融けかけの

チョコレートの表面を撫で回す。

 互いの体温でより一層溶けやすくなった

チョコレートが糖質に反応して溢れてくる

唾液に混ざって溢れようとするのを懸命に

呑み込むしかない。

 時折チョコレートに紛れて俺の舌を撫で

ていく兄貴の舌は偶然というには出来過ぎ

ていて、しかし愛撫と言うには物足りなさ

すぎる。

 どっちかにしてくれと兄貴のパジャマを

掴んだ拍子に、融かされて表面が薄くなっ

ていたチョコレートが割れて、仕込んでい

た仕掛けがドロリと舌に伝った。


「んっ、ふぅ…っ」


 吐き出すわけにもいかないその仕掛け

を、兄貴は俺の舌から舐めとって味わう。

 チョコレートの中に仕込まれたその少量

の仕掛けに兄貴は気づいただろうか?

 パジャマを掴んで縋る俺の体を支えなが

らチョコレートが解けきるまで兄貴は口移

しに見せかけて俺の口内を舐め回し、チョ

コレート味の唾液を吸い上げてようやく俺

の舌を解放した。


「チョコレートに何を仕込んだんですか?

 ただのビターチョコレートだと思ってい

 たら、中から何か出てきましたけど」

「兄貴こそ、チョコ食べさせるフリして何

 してるんだよっ。

 舌はダメって言ってるのに…っ」


 下半身にじわじわと熱が集まっていって

いるのはブランデーのせいなんかじゃな

い。

 兄貴が俺の舌の上でチョコレートを味わ

うフリをしながら無視できないほど唾液を

混ぜたからだ。


「チョコレートより僕が喜ぶものを知って

 いるくせに出し惜しむからですよ」


 そう言ってクスクス笑う兄貴の考えが読

めない。

 というより、下半身が本格的に熱い。





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あきゅろす。
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