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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 2月14日。

 きっと一年で一番チョコレートが消費さ

れる日だと思う。

 告白してチョコを渡して、泣いたり笑っ

たり…。

 でも一つ共通して言えるのは、バレンタ

インというイベントに便乗して素直になれ

る日でもあるんじゃないかと思う。


 甘い匂いが充満するキッチンで、一足早

く帰ってきた俺は毎年恒例のチョコレート

ケーキを作っていた。

 両親が共働きしていることもあって、こ

こ数年は俺や麗が簡単なチョコレート料理

を作るのが恒例になっていた。

 チョコレート料理と言っても本当に簡単

なのしか作らないし、そこまで苦でもない。

 ケーキなんて言うと手がかかりそうに聞

こえるけど、そんな凝ったデコレーション

はしないし家族5人で食べるから材料を混

ぜて焼いてしまえばほぼ完成というケーキ

のほうが結果的には手間がかからないとい

うのが大きな理由だ。

 毎年のことだから手際はそこそこだと思

う。

 充満する甘い匂いだけでお腹いっぱいに

なってしまうのが玉にキズだ。

 せっかく焼いたけど結局お腹いっぱい状

態であんまり食べれないというのが多い。


「お兄ちゃん、ただいまー。

 買い物行ってきたよ」


 卵黄と砂糖をハンドミキサーで混ぜ終え

る頃、買い出しに出ていた麗が帰ってき

た。


「お帰り、麗。

 製菓用のブランデー買えた?」

「うん。最後の一個だった」


 ニコッと笑って麗が小さな小瓶を取り出

す。


 良かった。

 昨日の夜に使いきっちゃってどうしよう

かと思った…。


 俺が買いに行くと言ったんだけど、麗が

「危ないからお兄ちゃんは家でケーキ作っ

てて?」と言うので甘えてしまった。

 なんでも最近香りが…フェロメニア体質

の香りが強くなってきているらしくて心配

だからあまり外に出てほしくないらしい…

俺には自覚がないんだけど。

 そのきれていた製菓用のブランデーは昨

日俺が使ってしまったなんて言えなかった

のが心苦しい。


「じゃあ僕は何をすればいい?」

「うーんと、じゃあメレンゲ作ってくれる

 か?

 ミキサー洗っておくから」

「はーい」


 そう言って麗が手を洗いに洗面所に行っ

ている間に、ハンドミキサーの先端部分を

取り外して流しに持っていき丁寧に洗って

キッチンペーパーで水分を拭き取る。

 ちゃんと水気をきっておかないとメレン

ゲが上手くできないからだ。


「えーと、卵白は冷蔵庫?」

「うん。冷やした方が早くできるから」


 キッチンに戻ってきた麗も毎年の事だか

ら手際を心得ていて迷わずに冷蔵庫に向か

って扉を開ける。

 俺は湯煎しながら放置していたチョコレ

ートとバターの溶けたものを先程混ぜてい

た卵黄の中に流し込む。





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