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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 そう思ってじっと見ていたら、麗がよう

やく何かを決意したように口を開く。

「じゃあ、言うけど…。

 今夜泊まっていいか、ちゃんと兄さんに

 は聞いたんだよ。

 その………夢の中で」


 ポカンとして暫く声が出せなかった。

 あまりに突拍子もない返事に理解が追い

つかない。


「えーっと…それは、そういう夢を見たっ

 ていうことでいいのか?

 だから聞いたつもりになって、今夜来た

 っていう…」

「ほら、信じない」


 こちらは懸命に理解しようとしているの

に、麗は少しだけ唇を尖らせて拗ねてみせ

る。


 え?何?

 だったら、どういうことなんだ…?


「兄さんはお祖父ちゃんが…母さんのお父

 さんが夢魔だって話は聞いてる?」

「あぁ、うん。よく分ってないけどな」


 “夢魔”とは聞いたけど、それが淫魔と

どう違うのかは知らない。

 ゴタゴタしていたから聞きそびれてしま

っていたことだ。


「夢魔っていうのはね、人の夢を渡るんだ

 よ。

 それは“夢渡り”っていう能力なんだ。

 秀兄さんは淫魔としてあぁいう能力を開

 花させたけど、僕は物心つく前からずっ

 と夢渡りをし続けてきたんだ」


 ちょっと待て。

 物心つく前からって…それってだいぶ前

からってことだよな…?


 ポカンとする俺を見て麗はクスクスと笑

う。

 さぞかし間抜けな顔をしてるんだろうけ

ど、俺は麗の言葉を理解するので手一杯だ

った。


「僕はね、物心つく前から自分で夢が見ら

 れないんだ。

 色んな人の夢に入り込んで、色んな人の

 夢を見ながら朝まで過ごす。

 そうやって夜を過ごしてきたんだよ。

 昨日の夜もそうして兄さんの夢に入り込

 んで…今夜泊まってもいい?って聞いた

 んだ」


 …うん。

 なんか突拍子が無さ過ぎて理解しようが

ない…。


 俺に分かるのはそれだけだった。

 キツネに摘まれたというか…UFOを見

ちゃったというか、そんな気分だ。


「信じてないでしょ?」

「うっ…そんなこと、言われてもなぁ…。

 もし俺の夢に入ってきたんだとしたら、

 どうしてそれを見たはずの俺が覚えてな

 いんだ?」


 苦笑いを浮かべたままの麗が顔を覗き込

んでくるのでしどろもどろで答えると、麗

は立てた片足を抱えて顎を乗せた。


「人の睡眠ってね、レム睡眠とノンレム睡

 眠の繰り返しで成り立ってるんだよ。

 レム睡眠の時は眠りが深すぎて脳まで眠

 っちゃってる状態。

 人が夢を見てるのはノンレム睡眠の間

 で、しかも起きた時に覚えてるのは一番

 最後に見た夢だけなんだ」


 まるで専門家のように麗の口からはスラ

スラと言葉が紡ぎだされる。

 まるでいつもの麗じゃないみたいな麗の

説明が終わるまでじっと聞いていることし

かできなかった。





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