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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*



「でもこれ、1つ多くないか?」

「何言うてるん?

 スノーマン言うたら3つやろ」


 クロードは何でもない顔で雪玉を縦に三

つ重ねる。

 しかし大きいこともあってかなかなかバ

ランスが取れず、俺は足元の雪をかき集め

て接合部の周りにたっぷりあてがって固め

た。

 おかげでバランスはとれたけど、縦に細

長い雪だるまになってしまった。

 馴染のある姿ではないが、クロードが満

足そうだからイギリスの方ではこういうの

が一般的なのかもしれないと思い直す。


「ほんまはベンチもあるし、あっちに本格

 的なん作りたかってんけど…。

 まぁあんまり外にいて風邪ひいてもあれ

 やしな」


 クロードはそう言いながら俺に枯れ枝を

一本差し出す。

 どうやらもう飾りつけに入るようだ。

 左右のバランスを見て腕代わりの枝を刺

し、鼻の代わりに人参を、目の代わりに木

の実をつけていくと確かに人間っぽい姿に

なっていく。

 仕上げに赤いマフラーを首に巻き、クロ

ードが被っていた帽子をその頭に乗せる。


「完成ーっ」


 嬉しくなって思わずクロードと掌を合わ

せる。


「いやぁ、スノーマン作ったの久しぶり

 や。あっついなぁ、さすがに」


 よく見ると寒さのせいで顔が赤いだけで

なく、額にわずかに汗をかいていた。

 雪玉を転がすだけでも確かに大変だった

だろうと思うし、何よりその晴れやかな顔

を見ていると子供扱いされた苛立ちも吹き

飛んだ。


「さんきゅ。お疲れ様」


 ダウンジャケットのポケットからハンカ

チを取り出してその額に伸ばすと、その手

首を掴まれて柔らかいものが唇に触れた。

 それがキスだと認識する前にパッとクロ

ードは顔を上げて悪戯っぽく笑う。


「くっ、クロード!」

「そないな顔せんでええやん。

 1人で雪玉転がして頑張ったんやから、

 このくらいの役得あらへんとな」


 あはは、と笑うクロードは俺の叱咤を聞

き流すつもりのようで、カイルに見られた

らどうするんだという俺の言葉もどうせ聞

きはしないだろう。





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