[携帯モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


『今から出かけますから、準備してくださ

 い』


 そう言われたのは当日の午前中だった。

 どこに出かけるのかと聞いても答えては

くれず、とにかく1泊2日の旅行だからさ

っさと荷造りをしろと急かされて言われる

がまま新幹線に乗せられてしまった。


「………」

「………」


 新幹線の車内でも会話はない。

 窓際の席を俺に譲った後は隣のシートに

収まって分厚い本を読み始めてしまった。

 あからさまに会話する姿勢でない兄貴を

物言いたげに見つめ続けてようやく兄貴は

こっちを向いた。


「なんですか?」

「そろそろ教えてくれてもいいと思うんだ

 けど、色々」


 ただ支度をしろと言われて急かされるま

まに出てきてしまったけれど、これから何

処へ行くのかも何の為に行くのかも何一つ

聞いていない。

 そのあたりの事をそろそろ聞かせてくれ

たっていいと思う。


「“色々”じゃわかりませんよ。

 まず何から聞きたいんですか?」

「じゃあ…行き先は?」

「温泉です。たまにはいいでしょう?

 GWも夏休みも特別講習ばかりで遊びに

 行けませんでしたから。

 僕は今年から大学に通いながら一人暮ら

 しですから、クリスマスも正月もいらな

 いと言ったんですけどね…。

 合格祝いに、と」


 なるほど。

 確かに兄貴はずっと学校と塾ばかりだっ

たように思う。

 言われてから気づいたけど、そういえば

今年のクリスマスもお正月も兄貴が何かも

らったのは見ていない。





[*前][次#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!