悪魔も喘ぐ夜
*
そんな兄貴の視線を受けて程よい距離で
歩み寄っていた足を止めた。
「それでも、あんな言い方したら、麗が傷
つくだろ?
なんで兄貴はいつもいつも冷たい言い方
しかできないんだ」
こっちも真剣な目で見つめたのに、兄貴
は机によりかかって冷笑した。
「な…なんだよ…」
兄貴の考えていることがわからなくてム
ッと口を引き結ぶ。
「駆は…本当に自分が麗に優しいと思って
るんですか?
キツイ言い方をしている僕よりも自分の
ほうが優しいと?」
「俺は麗にあんなこと言わない!
あんな顔させない!」
兄貴は噛みつくように返した俺に笑みを
深めただけだった。
「なんなんだよ、さっきからっ!
なんか言いたいことあるなら言えよ!」
「別に…何も?
僕は駆と違って意地悪ですからね。
教えてあげませんよ」
肩をすくめてみせるのが余計に神経を逆
撫でして唇を噛む。
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