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悪魔も喘ぐ夜
*


 兄貴の部屋の前で待っていると、湯上が

りのパジャマ姿で兄貴が2階へ上がってき

た。

 兄貴は俺をチラリと一瞥したものの、何

も言わずにそのまま自室へ引き上げようと

する。


「兄貴っ!」

「そんな大きい声を出さなくても聞こえて

 いますよ。

 入るんでしょう?」


 あくまでも冷静な声。

 なんの感情も感じとれない言動に俺の方

がイライラしてくる。

 昔はよくあったけれど、こんなの久しぶ

りだ。

 兄貴の部屋に入ったら何をされるか分か

らないから部屋の外で待伏せていたのに、

それがスポッと頭から抜け落ちていた。




「…それで?

 麗によからぬ事を教えた張本人の駆が、

 僕に何の用ですか?」


 兄貴に続いて部屋に入りドアを閉めた途

端に兄貴の問い掛けが飛んでくる。


「俺は変なことなんか教えてないっ!

 変な言い掛かりはやめろよっ」

「…たとえ駆にその自覚がなくても、麗に

 とっては“特別なこと”だった。

 だからこそ僕にも大きな態度に出た。

 この推察はおおよそ間違っていないと思

 いますよ?」


 兄貴は涼しい顔で言いながらコンタクト

の洗浄ケースにコンタクトを収納し、机の

上に置いてあった眼鏡ケースから眼鏡を取

り出してかける。

 振り返った兄貴の視線は眼鏡のシャープ

なフレームも手伝ってか何となく鋭くなっ

ているような気がした。





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あきゅろす。
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