悪魔も喘ぐ夜
*
「だってっ…」
麗が俺を掴む手に力を込めた。
そして次の瞬間、切ない叫びがその喉を
裂いた。
「だってそうしないと、兄さんはぼくから
お兄ちゃんをとっちゃうから!」
…一瞬ドキッとした。
それは俺の気持ちが兄貴に傾いているか
らとかいうのではまったくなくて。
何も言ってない、何も悟られていないは
ずの麗が、何を知っているんだろうと。
兄貴は何も言っていないはずだ。
もし言っていればもっと目に見えて何か
が変わっているはず。
「ずっと…ずっと不安だったんだ。
兄さんは、昔からお兄ちゃんしか見てな
い。
いつかお兄ちゃんを手の届かないところ
に連れて行っちゃうって」
泣いているのか…麗の声が震えている。
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